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弐百漆拾伍 ページ1



満を持し開始された白鯨への単身潜入。主たる目的は地上への総攻撃を目論む組合を阻止し、白鯨の管制を奪うこと。


谷崎の操縦する超小型強襲機『夜烏』に送られ、無事に侵入を果たした中島は手当り次第に扉を開き中を伺う。見る部屋見る部屋が全て空室で。足早に廊下を進む自分の足音と呼吸音がいやに響いていた。


『中の様子は?』


無線機から届く太宰の問い。使い慣れぬ機器にあたふたしながらも操作を覚えたのはつい一時間前。簡単だから大丈夫、と判を押した太宰は特務課の通信室から中島に指示を出している。

それはさておき。

白鯨の中は人の気配も、音もしない。少なくとも夏也は機内に居る筈だが、そんな気配は微塵もない。広い船内だ、抑捜さなくて良いと太宰から少しキツめに云われてる。軽く頭を振り中島は意識を集中させ、太宰に応じた。


「静かです。誰も居ません」


何処に行ったんだろう、と誰に云う訳でもなく呟き、次の扉を開く。どうせまた空っぽの部屋だ。手早く済ませよう、と中を覗く。


「団員の殆どが脱出した」


人が、居た。

揺り椅子に坐し、待ち伏せたかと疑いたくなる時期で滑り込んできた言の葉。驚きと警戒を混ぜて中島は室内の人物に目をやった。

数日前中島が白鯨に囚われた際にも会っている。確か、白鯨を呼び出した組合の異能力者。何故彼が此処に、と当然の疑問が顔を覗かせた。

が、それを口にするよりも組合の能力者――メルヴィルが二の句を紡いだ。


「残った僅かな人員も次の輸送便で白鯨を離れる。何故か分かるか、小僧?」


一応問い掛けの形だ。然し中島の返答など必要としてないのだろう。反応を見る事も、促す事も無く一拍の時は何事もなく過ぎ。

トントンと煙管を叩き、中身を均す。手慰み程度の動作。折角均したのを喫する事なく、再度手中に収めたメルヴィルは言葉を続ける。


()()()だからだ、この戦争のな。次の一撃で組合の敵は灰になる。この白鯨と共にな」

「灰だって? ……まさか」


沈鬱なメルヴィルの声。滔々と告げる口調に滲む諦観は中島にある発想をさせた。


「大方手薄な隙を狙ったつもりなのだろう。だが、この(タイミング)で組合主力が白鯨を離れる動き。不自然だと思わなんだか?」

弐百漆拾陸→



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みゃあ(プロフ) - 狐猫音。さん» 度々のコメントありがとうございます!少しでも楽しんで頂けたのなら作者冥利に尽きます。お言葉の一つ一つが物凄く嬉しいです。読んで頂き、ありがとうございます。 (2018年12月26日 14時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
狐猫音。(プロフ) - 限定公開……!クリスマスは楽しいですね。番外編という最高のクリスマスプレゼントをありがとうございます。とても楽しんで読むことができました。これからも更新頑張ってください。 (2018年12月26日 12時) (レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
みゃあ(プロフ) - myuさん» 有り難いお言葉です……!展開に自信なかったので少し安心しました!更新頑張ります。 (2018年11月4日 11時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
myu - とっても面白い作品です。更新頑張ってください (2018年11月3日 16時) (レス) id: fe06e07095 (このIDを非表示/違反報告)
みゃあ(プロフ) - ЯRさん» コメントありがとございます!そう言って頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます! (2018年8月8日 15時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みゃあ | 作成日時:2018年4月30日 21時

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