第４３話 火災 ページ44
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人数が多いので、カラオケは一時間、二時間、とあっという間に時間は過ぎていった。
最初によく歌って疲れたらしい園子や蘭は私の左右隣に来て、雑誌を一緒になって読み始めていた。
「ね、今度ここいこーよ」
「ここ？ 新設カフェ…へえ…いいなー」
オススメスポットの真ん中に書かれているカフェの説明に目を通しながら話し合っていると、小五郎おじさんがトイレから戻ってきた。
そしてそれから少し間を開けて、空いてるトイレを求めて駅に行った人たちが帰ってくる。
野口さんだけがまだ帰ってきていないが、どうやら酔いを覚ますために駅前をうろついているとのことだった。
「もう三時過ぎか…」とおじさんが眠そうな目で腕時計を眺める。それを聞いた宮崎さんが「そろそろ帰ります？」と言い出した。
先程からちらほらと欠伸が出ているので、丁度良い頃合だろう。早坂さんが「部屋も散らかしたまんまだし…」と同意を添えた。
「みんなでさっさと片付けて寝ると………え？」
沢井さんが不意に言葉を途切れさせた。
「おい、あれ火事じゃないか？」
沢井さんの言葉に、窓近くにいた人が視線を向ける。窓を見た早坂さんが焦った声を出した。
「ちょ、ちょっとあれって…まさか」
「僕らの貸別荘！？」
部屋中の空気に緊張が走った。顔を青くして、園子が「うそ…」と呟いた。
窓の向こうには確かに暗がりに一点の明々とした何かが浮かんだ、怪しい光景が広がっている。私は、ハッとして息を飲んだ。
「あ…あそこには、まだ麻美先輩が…！」
「とにかく早く別荘に！！ まだ間に合うかもしれん！！」
おじさんがそう怒鳴り、動けなくなっていた皆が動き出す。
「消防車呼びます！」と叫ぶと、宮崎さんが「それなら私が！ 住所覚えてるから…！」と言って携帯を取り出した。
そしてその時、タイミングよくレンタカーのキーを持っていた野口さんが部屋に戻ってきて、そのまま皆で急いで別荘に戻ることになった。
おじさんがレンタカーを急発進させる。この緊迫した状況で、口を開ける人間は一人もいなかった。
別荘で過ごした時に見た麻美先輩の笑顔や笑い声が、走馬灯のごとく頭に流れて、恐ろしい未来を暗示するような不気味なそれに、思わず手をぎゅっと握りしめる。
麻美先輩、どうか無事で。火事に気がついて逃げていますように…。
燃え盛る別荘はもう目と鼻の先にあった。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (
レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます！！！更新応援しています！！！シリーズ化大希望です！！！！！ (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか？ (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした！すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください！！♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ！"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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