第42話 新一について ページ43
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歌わない自分が行くものではないと断ってしまう事が多いので、カラオケに来るのはもう随分久しぶりのことだった。
カラオケといえば、以前蘭や園子が人気バンドの打ち上げパーティに参加した時殺人事件が起こって、新一が事件を解決してくれたと言っていたような。
カラオケか…と私はぼんやり想い出を頭に浮かべた。
行くのは大体園子が皆で行こうと何かのイベント終わりに誘ってくれる時で、そんな時はいつも新一が隣にいてくれたから、歌わなくてもあまり気にされなかったのだ。
思い出に浸っていた私の所に、蘭と園子がやってきた。
「A、私達の曲選び手伝ってよ」
「いいよ。じゃあ…TWO−MIXの…」
蘭と一緒に携帯でどんな曲があったか調べていると、園子が「Aも何か歌えばいいのに」と言った。
「だって声がうまく出せないもん…」
「でもこのガキんちょみたいにすんごい音痴って訳じゃないんでしょ?」
「コナン君も音痴なの?」
苦手というだけではなく、新一同様に音痴らしい。私が驚くと、隣でコナン君は「アハハ…」と固い笑顔をみせた。
本当に新一に似てるんだな、と私はコナン君を見つめた。
新一も今日ここにいれば、コナン君みたいに隣に座っていてくれただろうか。
そうして新一のことを考えると、芋づる式に別荘で先輩に聞いた新一の好物についての記憶も引き起こされた。
「……ねえ二人とも、知ってた? …新一ってレモンパイが好きなんだって」
私がそういうと蘭も園子も首を横に振り、不思議そうに、麻美先輩に聞いたのかと尋ねてきた。
私は新一がレーズンを苦手にしているのぐらいは知っていたけれど、好物なんて全然知らなかった。
「先輩って新一のこと本当に良く知ってて……私なんか、幼馴染なのにね」
「A……」と蘭が心配そうに隣に座ってくれる。園子はソファの背もたれに肘をついて、私の背を軽く叩いた。
「でも、どーせ新一君はフラれたんだし、先輩と自分を比較したってしょうがないでしょ?」
「そうよ、大体幼馴染だって知らないことの一つや二つくらいあったって当然じゃない!」
「そーそー蘭のいうとおり! それにAにはAのいいトコがあるんだから、これからそれを活かせばいいのよ!」
そう言って園子は私の背をまた軽く叩いた。こうしていつも励ましてくれる蘭と園子に、私はなんとも表せぬ熱い想いが胸に湧いて、「ありがとう」と言って笑みを浮かべてみせるのだった。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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