第36話 掃除終了 ページ37
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掃除が終わり、どっさりと埃が取れた図書室は幾段にも見違えてみえた。書斎机は磨き上げられて、先ほどよりも美しく輝き、天井を反射させていた。
「あー疲れた!」
園子が椅子に座りこむ。この中では一番体力がありそうな蘭でさえも、些か疲れた様子だ。コナン君は掃除が終わるとそのまま本を読み始めていた。
持ってきた紅茶パックで紅茶を淹れると、私は書斎机にそれを運んだ。匂いにつられてか、ぐったりしていた蘭や園子も顔を上げてコナン君も本を片手にやってきた。
「コナン君、紅茶は飲める?」
「うん」
「いい香り〜これなに?」
「フォートナム&メイソンのアールグレイ、お母さんのお土産でね……あ、そうだ。今日蘭達に渡してってお土産預かってたんだ」
ふと思い出した私は、隅に置いた鞄の横に並べていた紙袋を取り、再び皆の元に戻った。
母から預かっていたのは茶葉や、トフィーやスコーンなどのお菓子類で、蘭や園子も充分喜んでくれているようだった。
「これ、新一の分も一緒?」
「ううん。新一には、この雑誌…」
取り出したのは、古臭い感じの英文雑誌だ。「きっと気にいるわ」とお母さんは言っていたけれど、これのどこが気にいるというのだろう。
園子も蘭も私と同じように思ったようだが、突然コナン君が「うわあ!」と明るい声をあげた。
「ビートンのクリスマス年鑑、一八八七年の十一月号復刻版!!」
全く聞き覚えのないフレーズに私はコナン君を凝視した。コナン君はというと、私達の視線には気がつかずに目を輝かせて、机に身を乗り出して眺めていた。
「これ知ってるの?」
「勿論、ここに書いてある『A Study In Scarlet』はつまり『緋色の研究』、シャーロック・ホームズの第一作が一番最初に掲載された雑誌だ………」
その説明に呆気に取られていると、「っていうのがあるって、新一兄ちゃんが…!」とコナン君は付け加えた。
なんだそういうことか。私がどこかホッとして胸を撫で下ろした隙に、コナン君が嬉々として机の上のその本に手を伸ばした。
「あ、ダメだよコナン君。これは新一宛だから…」
私がその手を掴むと、コナン君はあからさまに落胆した表情を見せた。あまりの切ない表情に、私は「新一が良いって言ったらいいけど…」つけ加えた。
その数分後、幸運少年のコナン君から「新一兄ちゃんから偶然携帯に電話があって、良いって言ってたよ!」ときた時には、ぽかんと口を開けてしまうのだった。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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