第16話 彼女の本音 ページ17
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じゃあね、と手を振って去っていくAの背が小さくなる様をじっと見つめる。Aが角を曲がっても、オレは暫く外に立っていた。
聞きたいことがあったのは嘘ではない。
先ほど会った男と何をしていたのか、色々聞き出したかったのだ。
しかしそんな事を聞ける雰囲気ではなく、オレは「忘れてしまった」と幼いフリをすることしか出来なかったのだ。
『_本当に電話の向こうにいるの、新一なのかなって』
不意に脳裏にAの言葉、そしてその時のAの得も言えぬ物悲しい表情が蘇って、オレはぎゅっと手を固く握った。
江戸川コナンとして出会ってからはまだ数週間だが、Aがオレの本当の姿見たのは、もう二ヶ月以上も前。
一度白乾児で工藤新一に戻れた時も、Aの前に行くより先にすぐまたコナンへと戻ってしまった。
「A……」
工藤新一の時にはあまり涙を見せなかったAが、コナンの姿になって出会ってからは、何度も涙を堪えたような表情を見せている。
アイツを不安にさせている事実が、どうしようもなく身に染みた。
いつもならこんな時はAに電話をして、安心させようと試みるが、Aの本音を聞いてしまった今日ばかりは出来そうにもなかった。
___
「あー…恥ずかしい……」
あれから一週間。私は小学生のコナン君に対してあんな小っ恥ずかしい事を口走った事を全力で後悔していた。
お昼休み。急に思い出して私は机にうつ伏せになった。
それが見られていたのか、園子がお弁当を持って私の席の前に座ると「何が恥ずかしいのよ?」と興味深そうな目つきで探りを入れてきた。
先に隣の席に来ていた蘭も「最近なにかあったみたいなのよ」と園子に教えている。
「この間ね…蘭が合宿だったから、園子と一緒にコナン君のところに行った時……その後にね……」
憂鬱な気持ちで、かくかくしかじかだと説明をすると、蘭と園子は目を丸くさせた後、フッと笑った。
「そんなSF小説みたいなことAが言うなんてねえ……『新一は生きてるのかしら、この電話の先の彼は本当に愛しいあの人なのかしら…!』なーんて感じで言っちゃったんでしょ!」
「園子、それ誰のつもりなの?」
「勿論Aに決まってるじゃない。ね、蘭?」
「私は似てないと思うけどな……Aは新一の姿見てないもの。不安で当然よ」
その次に、「そうだ!」と蘭が思いついたようにポンと手を打った。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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