【名探偵コナン】 My Precious _ 03 【男主】 (ページ7)

今日:27 hit、昨日:48 hit、合計:44,576 hit

File：105￤謝罪の意味￤塚本side ページ7

「平野さん、ほんとにごめんなさい！！根も葉もない噂を信じて…！良く知りもしないのにコソコソしちゃって…居心地悪かったよね…」

「え…」

登校してみれば私の前の席、つまりはずっと空席だった平野さんの席には人集りが出来ていた。その中にはクラスメイトだけでは無くて、他のクラスの生徒も有って。( まさか、 )

「 ── 明日になれば分かるって、この事？」
「出処の分からない話と、人がちゃんと見た(・・)話。── 人が何方を信じるかなんて、明白だろう。証言したのが、裏表無く皆に慕われる香月なら尚更な」
「！榎本」

丁度、登校して来たのか後ろに立っていた榎本がそう口にする。( 確かに南雲が人から好かれる性格はしてるのは三年間過ごして来て、認めざるを得ないけど… )

「そして話は人から人へと伝わる。自分が聞いていた噂が嘘だと分かれば、それに左右されていた人間は少なからず罪悪感を抱く。その罪悪感を少しでも拭おうと ── 次に取る行動は、謝罪(あれ)だけだ」

くいと顎で示すのは未だに人が減る事の無い彼女の周り。── 謝ったからと言って、その人の傷が癒える訳じゃないのは重々承知の上。それでも尚、謝るのは何も言わずに居るよりは気が楽だからな。

── 榎本の口から、淡々と呟かれる言葉に…

「それって、自己満足じゃないの？」

口から出たのは、その一言だけだった。

「そう言ってしまえば終わりだが、要は気持ちの問題だろ。唯、ごめんと言うだけなら幼稚園児や小学生にだって出来る。大事なのは…── 〝自分が何してしまったのか、何が悪かったのかを考えた上で非を認め、反省する事〟。自分の非を認めるのって案外難しいだろう」

直接何かをした訳じゃないけど、遠回しに避けてしまった。面倒事に巻き込まれたくなくて、話し掛けられても無視した事も有った。── 話を聞く中でも、色んな＂謝罪＂があって。

「俺達は未だ高校生だ、失敗だって沢山する。人を傷付けた事実は消えないが、問題は同じ事を繰り返さない事。……繰り返すようなら、救いようが無いがな」
「………そこまで考えてるなんて、アンタって本当に同い年な訳？」
「正真正銘、同い年」

自分の席へと向かう背中に少し呆れを含んだ声で口にすれば、振り返る榎本。その顔は相変わらず真顔だったけど、この状況への安堵感も垣間見えたような気がして。

( どっちにしろ ── 詐欺に近いわ )

・

・