人間を愛したかみさま【短編】 (ページ13)

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神に魅入られた宝石４(ザーボン) ページ13

「待たせたな」
広々としたバスルーム。
こんな環境では満足に手入れができないではないかと、彼女が地獄の一角に作った私専用のバスルームだ。
フリーザ軍で利用していたものを再現し、そこに私のありとあらゆる注文をすべて取り入れたものである。
因みに、彼女の所謂〝お気に入り〟にはこのような特別待遇がなされている。
『今日は早いじゃない。入浴剤はどれにするの？』
私がバスルームに入ると、すでに髪を洗い終わったのか濡れた髪を一つにまとめ、バスタブの縁に腰掛けていた。
「乳白色系の入浴剤、好きだろう？今回はこれにしよう」
『私に気を使わなくても、貴方の好きなのを選んでくれていいのに。でもありがと』
実を言うと私もこの入浴剤が気に入っている。
湯が白く濁るから、浸かってしまえば体が見えなくなる。
だから彼女がいる時はなるべくこれを使うことにしている。
『今日はどうだった？私別の宇宙に行ってたから把握してないの』
「特に変わったことはなかったが。そうだな、ギニュー特戦隊の奴らに手合わせをさせられたよ。おかげで腕も足もむくんでな…」
言い終わってからしまったと思ったが、出てしまった言葉は戻しようもない。
私の戦う姿を美しいと言う彼女。
しかし彼女に無許可で必要性のない戦闘を行うことをたいそう嫌う。
傷などつけようものなら余計だ。
『手合わせ?!何でそんなの受けたのよまったく。取り敢えず傷がついてないか見せなさい』
手先、腕、肩、首筋、胸、腹、脚、足先、そして顔。
体の隅々まで時間をかけて見ていく。
真剣な眼差しに対して、触れる手は余りにも優しい。
『うん、目立った傷は無さそう。今日はマッサージ入念にしとこうね』
入浴時は体が温まるのでリンパマッサージをするには丁度いい。
一糸まとわぬ姿で向き合い、体を密着させ全身に触れられる。
流石に気恥ずかしさもあり苦手であったが、慣れというのは恐ろしい。
『こんなもの…かな。さぁ、今度は髪ね』
後ろに倒れて頂戴、と促されるまま体を預ける。
胸に頭を置く形になるが、今さら気にしても仕方がない。
『本当に貴方って美しいわ。髪も、肌も、眼も、何もかも』
うっとりと私の顔を覗き込みながら髪を洗う。
Aが私を見つめるその顔、その表情を見るのが私にとって至福の時間だ。

「お前が私を美しいと言い続ける限り、私は美しくあり続けるよ。永遠にな」
『ふふ、じゃあ永遠に言い続けるわ。貴方は何よりも美しい。私だけの、唯一無二の宝石よ』