BALL31 ページ32
次に見えたのは、倉持と御幸。
同じコーナーで商品を見ていたらしい。
既に御幸の手には、真新しいスコアボードを持っていて、その横で倉持はスパイクと格闘していた。
｢よっ。｣と言いながら近づくと、｢おー…｣と物に真剣でAの方を見向きもせず返事をする。
いささかAにとっては面白くなく、口を尖らす。
構ってくれないならここに用はない。
ふらふら…と店内を回る。
すると、試し振りが出来る多目的コーナーで、一人の中学生位の子がﾌﾞﾝｯ…と勢いよく振っていた。
中々かっこいいフォームをしているし、軸もしっかりしている。
いつも意地悪だが野球は上手い野郎のバッティングを見ているからか、つい声をかけてしまう。
｢君スイング上手いね！｣
｢え？あ、えっと…どうも……。｣
｢でも足はもうちょっと開いた方が踏ん張れると思うよ。
あと君の場合だったら、グリップは下に持った方がボールは当たりやすい。力ありそうだし、飛ばすことに関しては苦労しないと思うんだけど…。｣
｢！お姉さん詳しいですね。｣
｢こう見えてもあの青道高校野球部専属の…専属の…その…コーチみたいなもんだからね！｣
｢えっ、青道高校なんですか…？！凄い！｣
｢ふふんでしょでしょ。｣
｢じゃああの御幸一也選手とも会ったことあるんですか！｣
｢…御幸選手……？;;｣
その呼び方についｽﾞｺｯ…と肩を落とす。
なんでもこの辺ではやっぱり有名らしく、御幸について沢山語ってくれた。
チーム内でも｢すげぇよな！｣と話題になるらしい。
でもなんだかそれは気に食わない。
御幸が凄いのはわかるが、他にもすごい選手はいっぱい居る。
｢…御幸も勿論凄いけどさ。それを支えてる奴らもチョーかっこいいよ。｣
｢支えてる人？｣
.
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