BALL3 ページ4
ちょっと待って…と焦りながら必死に高島に言う。
こんな大勢部員がいる強豪校のブルペンでピッチングなんてたまったもんじゃない。
無理無理無理…と必死に言うが、高島は俄然やる気だ。
嬉しそうに｢交換条件よ交換条件。ゴキを倒す代わりに、ピッチングする。安いものでしょ？｣と言う高島。
全くAの心は嬉しくないが。
だが、一人でゴキブリを退治できるとも思えない。
というか絶対出来ない。
だったらまだピッチングをした方がマシなのではないか。
・
悩みに悩んだ末、結局 嫌々ピッチングを受けることにした。
高島の顔はいつになく明るくなり、｢御幸君、ちょっと来てくれる？｣と御幸に声をかけている。
今にでも部屋に戻りたいAは、下を向く。
タッタッタッ…と駆けてきて、｢なんスか？｣とあっけらかんに聞く御幸。
高｢球を受けて欲しいの。この子のね。｣
御｢…鈴井？だよな。｣
｢……ん、久しぶり。｣
御｢髪切ったのか？短くなったの、似合ってる。｣
｢あ、りがと。｣
高｢あら知り合い？｣
御｢ちょっとだけ。｣
高｢なら丁度いいわ。この子の球、受けてくれる？ちょっとした約束をしちゃったから。｣
御｢構わねぇッスよ。｣
本音を言うと、一年の頃 ずっと御幸はAの球を受けたかった。
ソフトボールのボールだとどんな感じなのか、どれくらい早いのか…。
興味本位で食いつくように聞いたのを、今でも覚えている。
だが、どれだけ頼んでもAが投げてくれる事は無かった。
最後は絶対あしらわれてしまう。
それが今日、必然的に受けれるようになったのだ。
ラッキーなことこの上ない。
御｢ははっ、よろしくな。｣
｢うん、よろしく。｣
.
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