【◇A】青心寮在住の引きこもり、その二。【逆ハー】

BALL71 ページ26

なんて悲しい青春なんだ…と自分で追詰める。

考えてみれば、自分から好きになったことなんて一度もなかった。


好きな人も部活動頑張ってるから私も頑張ろう！
好きな人と一緒のグループになれたらいいな…。
好きな人が私の事好きだったり…なんてね！


そんな思春期なら一度はするであろう妄想が、Aには一度もない。

随分と残念な17年間を送ってきたような気がする。
とはいえ、今までそれで困ったことは無いが。

・

｢はぁあ…｣と大きなため息をつきながら、積み重ねて置いてあったマットにごろんっ…と寝転がった。

何もすることがないと気が滅入ってしまう。

それは小湊 御幸 倉持も同じで、世界に音が消えたかのように静かな空気が流れる。

すると、小湊がぽそっと一言呟いた。



小｢いけるかな、夏。｣

｢…珍しいですね、小湊先輩がそんなこと言うの。｣

倉｢ホントっすよ。｣

小｢ダメなの俺がそういうこと言っちゃ。｣

御｢そういう訳じゃねぇっすけど…｣

｢あはは、今になって弱気ですか。｣

小｢お前も言うようになったね。｣

｢だいじょぶだいじょぶ。
私がいる限り、ぜーったい行けます。｣

倉｢なんだそれ。｣



あははと笑う。

意味の無い自信だし 何の根拠も無いけれど、なんだかAが言うと本当にそれが実現できそうな気がしてくる。

寝転がっているAの顔を見て、｢ぶっさいく。｣と言う小湊に｢可愛いって言いたいんでしょ、知ってます。｣と笑った。





彼女の言葉は、魔法みたいだ。

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