ブリード本丸 "三"

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_______「榊原さん、









栄転おめでとうございます」









モニターに映る人物にそう、賛辞を送る









「ありがとう」




良い値のスーツを着た榊原さんがいた





この十年間で榊原さんは



売買をしていた上司を



完璧な証拠をもって告発








その人は、正しい法律に裁かれ




死刑判決が下った







榊原さんはその功績を讃えられて




エリートコースに戻った







今では、時の政府の中でも一、二を争う権力者だ








「今月、そっちに送るのは２０人




リストは後で使いに渡しておくわ」





「はい」






十年も経つと、老けるのは人間の逃れられない運命だが




気苦労が多い仕事だと



さらに、その速度は増すらしい






しかし、榊原さんは老けてはいるが





貫禄も倍増している









「それで、そっちの男士達に影響は出てないの？」






彼女は昔と変わらず、




Aと接する









「ええ、異変ありません」









十年という歳月をかけて、Aはこの本丸を政府の支配出来ない独立した空間にした









本丸を現世から切り離したのだ









「やっぱり、空間が切れているから




ウイルスに感染しないのかしら」






画面の向こうの榊原さんが顰めっ面をしている







「そうですね





もしかしたら、ここだけ旧型のままかもしれません」








淡々と通例の職務伝達の話を終わらせて





通話を切る









「Aちゃん、ウイルスってなに？」





紺の七が興味深そうに私に聞く






何も話せなかった子が、大きくなった







もう、子どもというより少年だが









「三年前に、政府がブリード本丸撲滅のために






未来永劫、取り除くことのできないウイルスをばら撒いたの」







「どうして？」





父親に似て鋭い目つきをしている




そして、顔もそっくりだ









「刀剣男士が"種"をつくれないようにするため」






「………じゃあ、もう、僕達みたいな」






そして、とても聡明な子に育った









「神子は生まれない」




Aは何処からか聞こえる子ども達の声に耳を澄ませた









(この本丸を除いては)







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