会いたい ページ29
息が苦しくなって、ごぽごぽと俺の口から空気が溢れる
大丈夫だ、エースは他の兄が守ってくれる
俺じゃもう、エースを守れないから
代わりに皆が守ってくれればいい
遠くなる海面をぼうと、見つめているとサッチが海面に飛び込んできて俺に向かって手を伸ばした
助けないでくれ
俺は父さんと母さんに会いたいんだ
伸ばされる手から逃れるように自分の腕を引っ込めると、サッチは水中で驚いた顔をした
さよなら、愛しい弟
そう心で呟いてから意識を飛ばした
.
.
.
目を覚ますなり見知った天井が視界に広がった
生きてた
落胆と少しの安堵
上体を起こしてベッドから降りた
お気に入りの船尾に出て隅の方で煙草を吸う
太陽に照らされて輝くブレスレットに目をやった
貴「…会えなかったね」
「誰にだ」
そう言われて慌てて振り返れば、サッチがいた
眉間に皺を寄せ、怒ったような表情で俺を見つめる
思わず目をそらした
貴「…別に」
サ「別にじゃねェ、…御前あの時死のうとしてただろ！！」
だったらなんだ
もう俺は必要ないんだよ
俺じゃエースを守れない
貴「…うん、死にたかった」
そう言って笑えばサッチは更に表情を歪めたあと、俺の頬を叩いた
サ「そんなこと言うんじゃねェ！！」
なんでそんなに怒ってるのか、わからない
何を思って俺を叩いたのか
何故そんなに悲しいような顔をするのか
貴「なんで？」
サ「…は？」
貴「なんで死んだら駄目なの？」
サ「なに、言って…」
貴「俺だって生きたいよ、…生きたいけど、……生きたいけど、父さんも母さんも居ない…、母さんの頼みも果たせない……、そんな俺に、この世界は生き苦しくて、たまらない」
サッチは目を見開いて呆然としている
話さない方がよかったか
貴「なんてね、冗談。助けてくれてありがとう、サッチ」
未だ呆然としているサッチの肩を叩いてその場を後にした
.
.
.
俺が目覚めた日から変わったことがある
俺が出撃しなくなったこと
サッチがあの話を親父にしたらしく、親父が俺を止めるもんだから行くわけにはいかない
昼間はいつも親父の目が届くところに居るように言われて、一日のほとんどを親父と過ごした
人間の姿で居ると戦いたくなるから、ここ最近は犬の姿でいる
。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 409人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yozakura - すいませんガチで泣きました(泣)良い話ですね (2020年5月1日 8時) (
レス) id: c24485d68c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - さーちゃんさん» 読んでいただきありがとうございます！！名前変換ができるようにしているんですが…、私の端末では変換できるのですが、名前を入力してもできないですかね？(涙)教えてくださりありがとうございます！頑張ります！！ (2019年9月29日 12時) (レス) id: 9854bed933 (このIDを非表示/違反報告)
さーちゃん(プロフ) - 名前変換ができてないです。変換されてないページは､最初から最後までの話の中の"名前"を使う時全部です｡変換する場合は､かっこをつけないと変換できないです…生意気ですみません!お話は､物凄く良くて号泣しました｡とても良い作品です!更新頑張って下さい！ (2019年9月29日 11時) (レス) id: 577dc20b2d (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - ユウさん» 読んでくださり、ありがとうございます！！！そう言ってもらえて嬉しい限りです(涙)私も書きながら泣きました()ありがとうございます、頑張ります！！！ (2019年9月16日 18時) (レス) id: 9854bed933 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - めっちゃ感動しました。本気で泣きそうになりました...。こんな文章を書けるなんて凄いです！尊敬です！更新頑張ってください！！ (2019年9月16日 17時) (レス) id: ed90e02b61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこ
| 作成日時：2019年9月13日 1時
