四畳半の夢幻空間 ページ12
ヨコハマのとあるボロアパートの一室で、一人の青年が寝転がっていた。
「ふぁ……今何時だ……?」
この男、森見登美彦は、人生という物の可能性を信じてはいなかった。
街角を歩けど大学に行けどもバイトに勤しんでも、自分好みの女性が声をかけてくれるどころか、現れることすらなかった。就職しようとしたが、ろくに給料の上がる見込みの無い仕事ばかりなことに気づき、一生のんべんだらりと終日のたり暮らしをしていこうと覚悟したのが一年前。
「あー……外出たくねぇ……なんもかんも面倒くせぇ……」
「……登美彦くん、やっと起きたのか?」
叩けば破けそうな薄い壁の向こうから、隣人の田山花袋の声がした。
実際に会ったことはただの一度もないが、悪い奴ではない。きっと。
「んー、花袋か……今何時だ?」
「九時のようじゃが……午前か午後かは判らん」
はぁ、と森見は溜息を吐いた。
「暇だな……異能でも使うかな」
森見が四畳半の部屋の片隅をぽんと叩く。
すると、いつの間にか森見は田山の部屋に来ていた。否、森見の部屋に花袋の部屋の様子がそっくりそのままに投影されているのだ。
「ちぇ、また此処かよ」
「何じゃ?
「いーや、こっちの話」
森見はもう一度畳を叩いた。
今度は、また別の四畳半空間の様子が現れる。
先程の田山の部屋とはまるっきり逆の、清潔な部屋の中央で、一人の少女がすやすやと寝息を立てていた。
「……成る程、夜の九時か……よぅし、今晩はこの美少女と添い寝してやろう!」
着物の少女は森見に気づかない。それもそのはず、この姿はあくまでも、森見の異能による幻に過ぎないのだから。
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零奈 - すみません、リクエストなのですがいいですか?朝井リョウさんと渡辺優さんをお願いします。朝井リョウさんは、鏡華ちゃんと絡ませて欲しいです。注文が細かくて申し訳ないのですが、どうかよろしくお願いします。 (2018年11月24日 19時) (レス) id: 92c720ec2f (このIDを非表示/違反報告)
イツキ108(プロフ) - リクエストにお答え頂きありがとうございました。わがまますみません。リクエストで,ビアトリクス・ポター先生の「ピーター・ラビット」で,兎の異能生命体を操る幼女は大丈夫でしょうか....?出来れば鏡花ちゃんと絡ませて頂けると有難いです。 (2018年10月9日 21時) (レス) id: 99648b5759 (このIDを非表示/違反報告)
ただの本好き(プロフ) - 説明有難うございます!成る程、確かにもっと様々な世界があっても良いですよね・・・私は七人とも好きですが、組合の人ならフィッツさんが結構面白くて好きです。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 1d708256dc (このIDを非表示/違反報告)
双白 - すみません、誤字ってました。設定は鏡花ちゃんと14歳で特務科所属、性格は某刀剣擬人化ゲームの虎を連れているショタに似た感じでお願いします。 (2018年10月7日 18時) (レス) id: fbe41339ea (このIDを非表示/違反報告)
双白 - 元・双代です。リクエストさせてください。織守きょうやさんを「記憶屋」でお願い致しますします。 (2018年10月7日 18時) (レス) id: fbe41339ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キューブ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年9月18日 22時