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「日に日に忘れていく。あれだけ好きやったのに。あれだけ一緒に居ったのに。少しずつ忘れていくんだ」
彼は頭を抱えながら、何かを見ようと目を広げた。どこにもいなくなったものを見ようとしているのだろう。モデルが居なければ肖像画なんて描けないのだから。
「……思いださなきゃ…意味が無いんや……」
震える手で彼は筆を拾い上げた。そして、中央に置かれたイスを見つめた。そこには勿論誰も座っていない。否、座っているはずがない。
彼は空虚や虚像ばかりを見ている。何もない、ただ椅子がある空間を見つめる。目的のものはそこには居ないのに。
それを理解したのか彼は力なく筆をパレットの上においた。
項垂れてこの世の終わりみたいな顔をする。大袈裟だ。
だって、居なくなっても彼の生活は大きくは変わらなかった。彼の周辺の友達だって変わらなかった。いつものように悪ふざけして、遊んで、たまに勉強して。以前と全く変わらなかった。
少しだけ、本当に少しだけ、いつもより暗くなっただけ。
「なぁ…知っとるか？人が亡くなった人を忘れる順番って、最初に声を、次に顔を、最後は思い出を忘れていくんやって。もう、俺、顔も思い出せない。思い出だって忘れんのかな…。俺もう忘れたくないのに……」
自覚してしまったみたいだ。そうしたならばもう後戻りは出来ない。
でも、結果的には良かったのではないだろうか。忘れてしまえば彼にとっては気が楽だ。マイナスな事を考え続けてしまうのは良くない。考えれば考えるほど気分が落ち込んでしまう。
ちょっと悲しいけれど彼が楽になるならそれで良い。
そして彼は、もう一度だけ「だから、思い出さなきゃ意味がない」と呟いたっきり、一言も発することはなかった。
「私もあなたじゃないと意味がないのにな」
ぼそりと溢した私は絵の黒色に吸い込まれていった。
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最近暗いお話ばかりですね…。今度はハロウィン風なものを書いてみようと思います(ハロウィンに間に合うかわからない…)
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ルビーのパースペクティブ【gr】→←記憶のレプリカ【sha】
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コットンの森(プロフ) - トクメイキボウさん» 嬉しいお言葉に心臓がぎゅっとなりました。純粋に嬉しくて何回もコメントを見返しちゃいます。無い文才を捻り出した甲斐がありました。短編は長編が終わり次第再開が出来ればと思っています。お読み頂き、そしてコメントありがとうございました！ (2019年3月31日 17時) (
レス) id: c3504fefeb (このIDを非表示/違反報告)
トクメイキボウ - コメント失礼します。完結おめでとうございます。実は貴方様の作品を以前から拝読させていただいておりました。貴方様の創る世界観が大好きです。短編集が終わるのは悲しいですが、長編の方も引き続き応援させていただきます。頑張ってください。コメント失礼しました。 (2019年3月31日 16時) (レス) id: 9fdc769b3d (このIDを非表示/違反報告)
コットンの森(プロフ) - パピヨンloveさん» しばらくログインしていなくて今しがた気づきました…。返信遅くなって申し訳ありません。題名は｢かくかくのさいじょ｣と読みます。赫赫で赤々と光輝く様や、業績や名声が輝かしく現れる様などの意味があります。個人的にそういう女性が好きなので題名につけました。 (2019年3月10日 12時) (レス) id: c3504fefeb (このIDを非表示/違反報告)
パピヨンlove - 読んでいて、凄いと思いました！！これからも頑張って下さい！！ちなみに、題名ってなんて読むのでしょうか？ (2019年2月16日 14時) (レス) id: d07448dafe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コットンの森 | 作成日時：2018年9月20日 0時
