続き ページ27
「俺はリーア。団長は、死んだのか」
「……ええ」
リーアと名乗った女性の視線はエルシアから外され、団長へと向けられていた。
その声には何処か悲哀が混じっている様に感じられた。
「……初めまして、ですよね」
「嗚呼、そうだな。帰還したのは昨日の夜の事で、今まではずっと他国に居た」
「成る程……これは、どういう事なんですか。団長は……あ、シュルクは!副団長は!?」
勢い良く立ち上がってそう叫ぶ。
「仲が良かったと報告書に書かれていた君ですら知らなかったのか」
「え……?」
「まず、警報システムは反応したか?」
「……してませんでした」
思い返してみれば、侵入者が来た時の為の警報システムは反応して居なかった。
反応していたら宿舎にも大きなアラームが鳴り響く筈だ。
こんな状況になるまで、そんな大きなアラームに気付かないなんて事がある筈が無い。
「警報システムは警備室から電源を切る事が出来る。確認したが外部からのハッキングや侵入は見られなかった。つまり、これは内部の犯行という訳だ」
「他国からのスパイ……?」
「そう考えるのが妥当だろう。スパイが誰なのか、だが……君には辛いかもしれないな」
リーアが目を伏せてそう言う。
内部の犯行という時点で若しかしたら、なんて思っていたが……信じられない。
だって、昨日別れる時も普段通りにまたねって……否、違う。
確か昨日はさよなら、と言われた。
そのさよなら、が永遠に……という意味なら。
あの優しさが嘘だったなら。
「シュルクが、スパイ?」
「その可能性が高いと踏んでいる。というか、ほぼ確実だ。警備室に副団長が入って行くのが映っていた……団長しか知らない隠しカメラだったから気付かなかったんだろうな」
わざわざ隠しカメラを設置する必要は無いだろう。
だって、元々から付いている他のカメラも分かりにくい位置にあるのだから。
でも後者は騎士団の誰もが位置を知っている……もしや団長は、既に察していたのか。
この騎士団の中に裏切り者……他国からのスパイが居ると。
「侵入してきた敵国の騎士団員と思われる者達は殺した。何人かは捕虜として拷問班が捕まえた。死者を追悼している暇は、今は無い」
「……はい」
「襲撃を受けた事、念の為国王には報告しておいた。今は何故か一番被害が少なかった男性宿舎前にテントを張り対策本部としている」
「分かりました」
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作者名:黒洞揚羽 x他6人 | 作成日時:2020年11月29日 1時