藍沢先生の日常2

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誰にも心配をかけないように普通にしようとすればするほど、普通がわからなくなってくる。





ぼやける視界でパソコンの画面に映し出される文字がしっかり読み取れない。



その上、体も思うように動かないため……




書類に書く字は間違うし、タイピングもうまくいかない。







思うように動かない自分の体に少しイライラして……



それでも迷惑はかけられないから誰にも言えなくて……






心身共に余裕がなかった。








昼になって藤川に食事に誘われても、行く気になれなくて「一人で行ってくれ」と冷たく言い放ってしまい、フェローにも挿管に戸惑う横峯や吸引すらもうまくできない灰谷にいつも以上に厳しく当たってしまった。






こんなの完全な八つ当たりなことくらいわかっている。






けど、うまく動けないでモヤモヤしている中で心には余裕がなく自分をうまくコントロールすることができなくなっていた。





誰かに助けてほしい……




けど、迷惑だから……




「迷惑をかける」そう思うとだれにも頼れないくて……




助けてほしいはずなのに「助けて」と一言言えない自分にまた、嫌気がさした。






そんな俺の異変に気づいていた奴がいたなんて余裕のなかった俺の視界には入っていなかった。



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名取side




朝、医局に着くとすでにシニアドクターは全員そろっていて俺が自分の席に着いた頃には横峯、灰谷、雪村も医局に揃って今日も長いようで短い怒涛の一日が始まった。






自分の席に座って仕事をしていると視界に入ってきたのは藍沢先生の姿。






どこか不自然で……けどどこがおかしいかと言われたらわからない。






けれど、いつも以上に俺たちへのあたりが強くて「これにお前のサインかいておいてくれ」と言われて渡された資料に目を通すと、日付が間違って書かれていた。






日付を間違うなんて初歩的なミスを藍沢先生が犯すなんてところは見たことがない。





それどころか普段は全部完璧で誤字や脱字なんて今まで藍沢先生から受け取った書類で見た試しがない。




それなのに日付を間違うってどうしたんだ？




そう思って藍沢先生に指摘しようと思ったけどパソコンと向き合う藍沢先生の様子をみて声をかけるのをやめた。







今日の藍沢先生は少しピリピリとした雰囲気をまとっている。






本能的に話しかけるとまずいと察した俺は藍沢先生に話しかけるのはやめて自分で藍沢先生の間違いをそっと訂正しておいた。

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