三十話 独りにならないで ページ31
Aさんには何かあるのは明確だった。
私は今何を聞こうとしてたの？
スモーカーさんも何も言わなかった。
私が聞いていいような話じゃない。
質問を飲み込み、代わりに受け取った差し入れのお礼を言った。
『スモーカーはさ、ずっとあーなんだぁ、悪人面で目つき悪いけど、本当にいい奴なの』
柔らかい表情でスモーカーさんのことを話すAさんを見て、Aさんがどれだけスモーカーさんを信頼しているのかわかった。
スモーカーさんも、Aさんのことを大切に思っているのがひしひしと伝わってくる。
『だからアイツにはいい人達に囲まれて生きてほしいの。たしぎちゃんみたいな素敵な人達にね？』
まるで、自分のことは違うとでもいうような言い方だった。
いつもの綺麗な笑顔は、何処か他人を寄せ付けない感じがあった。
近づきすぎないように、心を許さないように、気をつけているようで…
た「Aさんは何を恐れているのですか」
『…え？』
た「…ッ！すみません…答えなくて大丈夫です」
私はAさんに謝罪して部屋に戻ろうと立ち上がった。
『そうだね…私は恐れているのかもしれない』
驚いて振り返ると困ったように笑うAさん。
『これ以上大切なものが増えて、それを自分で壊してしまうんじゃないかって思ったらたまらなく怖いの。それでも…ずっと温かい場所に居続けたいって思ってる自分勝手な自分も大嫌い』
何が貴方をそうさせるのですか？
きっとスモーカーさんはAさんが話してくれるのを待ってる。
それは貴方も理解しているはずなのに、なぜ…
た「Aさんも、向き合ってください！」
『…私にその資格はないよ…』
た「ただ、心の弱い部分に私やスモーカーさん、クザン大将を置いてくれるだけでいいんです！貴方が何を抱えているのか、私にはわかりません。でも！独りになろうとしないでください！」
『ッ！！』
Aさんは綺麗な紫色の目を見開くと、私に背を向けるように立った。
『やっぱりたしぎちゃんに会えてよかったよ。貴方ならきっと大切なものを守りきれる素敵な海兵になれる。その優しさと貴方の正義を忘れないで』
た「Aさん！」
Aさんはそれだけ言うと屋根を登って自分の部屋へ帰ってしまった。
私は今でも時々思う。
あの時嫌がられても彼女の背中を追いかければよかったんじゃないかって。
そうすれば何が変わったんじゃないかって。
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もえぎ(プロフ) - コメントありがとうございます！複雑なストーリーとなっていますので最終的にどうなるかはまだはっきりしていませんが、その可能性は大きいです！ (2023年4月23日 21時) (
レス) id: 5993720d1e (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - この小説はトラファルガーローオチですか？ (2023年4月23日 19時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
もえぎ(プロフ) - ご指摘ありがとうございます！気づかなかったので助かりました！ (2023年2月5日 12時) (レス) id: 5993720d1e (このIDを非表示/違反報告)
金成(プロフ) - お/り/ふ;らたってますよ (2023年2月5日 10時) (レス) id: 6328f81305 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ‘フラ立ってますよ！ (2023年2月5日 9時) (レス) @page1 id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もえぎ | 作成日時：2023年1月16日 0時
