時計の針が示す先【CS/派生作品】 (ページ34)

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一体、この惨状は何なのだろう。

階級上は同格か彼の方が上となる相手に呼び出され、泣く泣くデザァトの無花果を冷蔵庫に仕舞ってから指定されたバーに来てみれば、何故こうなったと云いたくなる、否、叫びたくなる程の惨状が広がっていた。

「ちゅうやくんはかわいいなあ。ちっちゃいし、かおあかいし、かみのけふわふわだし、あおいろのめはきれいだし。ふふふ、おにんぎょうみたいだなあ」

「あァ？俺は人形なんかじゃねェぞォ……むにゃ……泣く子も黙る、ぽーとまふぃあの五大幹部なんらからなァ……」

「うん、しってるよ。でもかわいいの。たとえだよ、たとえ。ちゅうやくんはかっこいいかんぶさまだもんねー」

片や、顔を真っ赤にしてテーブルに伏せ、微睡んだ様子で言葉を返している酔っ払い。

片や、完全に平仮名のみの喋り方で褒めまくる、ふにゃふにゃと笑っている酔っ払い。

酒に弱い者同士で飲み会をすると、酔っ払いが酔っ払いを呼んで惨状を生み出す。その旨は芥川の脳内にきちんとインプットされた為、今後はこの様な惨劇は生まずに済むと信じたい。

「中原さん、此れ以上は店の迷惑になります故、帰りましょう。川端、貴様はさっさと酔いを覚まして自力で帰れ」

「んァ？おー、芥川ァ。手前も飲もうぜェ」

「いえ、僕は貴方がたを連れ帰りに来たのです。立てますか？」

「あくたがわくんだあ、ふふふ。きみもかおはきれいだよなあ。もっとごはんたべて、きんにくとかぜいにくとかつけなきゃだめだぞー」

「黙れ酔っ払い。貴様の所為で僕の無花果が冷蔵庫で寂しく僕の帰宅を待つ羽目になったのだぞ」

上司と同僚で対応が違い過ぎやしないか。
そんな当たり前の突っ込みをする者は、この空間には居なかった。

立ち上がる事すら出来ない中原は『羅生門』で持ち上げ、何とか歩けそうな川端は自力で歩かせる。ついて来れないなら放置だ。
車など芥川は運転しない為、徒歩で中原のセーフティハウスを目指す。その方向に川端のセーフティハウスもあった筈だ。

然し、と芥川は思案する。

酔っ払ってウザ絡みしてくる中原を敬遠して、酒飲みに付き合う者は広津や立原、そして川端位のものだ。文句は云いつつも何だかんだ付き合ってやる彼等は、本当に中原を慕っているのだとよく判る。芥川とて中原の事は慕っているが、酒は好まない質だ。

だが、川端は下戸であるにも関わらず、中原の酒飲みに付き合っている。一体、何が其処迄させているのだろうか。