Episode16 -2 ページ21
.
私たち以外にも所々にカップルの姿が見受けられた。
それでもどのペアもお互いに夢中なのか周りを気にする様子はない。
私たちは人の多い場所を避けて少し暗い方へと足を進めた。
潮風が肌を撫でる。
このまま家に帰ったら智兄さんには海に行ったことがすぐにばれそうだ。
まぁ、隠すつもりがあるわけじゃないけれど。
「少しは涼しいですけど、さすがに暑いですね」
「七月ですからね。すっかり夏です」
二宮さんに言葉を返しながら私はじとりと首筋に滲んだ汗をハンカチで拭う。
すると、その手を二宮さんの腕に掴まれた。
手首を片手で掴んだまま二宮さんが私の身体を引き寄せる。
「わっ…二宮さん？」
「あ、すみません…つい……」
パッと二宮さんが手を離した。
視線がきょろきょろと彷徨う。
しばらく見つめていると、観念したように二宮さんが視線を私に止めた。
ちょっとだけ、困ったように眉が下がっている。
「……すみません、やっぱり翔ちゃんの台本がないと上手く話せなくて」
確かに今までの二宮さんだったら恥ずかしくなるような言葉を言いそうなものだ。
けれど、ちゃんと自分の言葉で伝えようとしてくれることが嬉しくて、私は頬が緩む。
それを見て笑われたと思ったのか、二宮さんが拗ねたような顔をした。
「あ、笑うことないじゃないですか」
「ふふ、すみません。笑ったんじゃなくて…嬉しいだけです。二宮さんが自分で言葉を紡いでくれていることが」
「あ……そう、ですよね…」
「あぁすみません。そんな顔をさせるつもりじゃなかったんですけど」
悲しそうな顔をする二宮さんに慌てて声を掛ける。
一度海の方を見た二宮さんは、急にパンと自分の頬を叩いた。
びっくりして名前を呼ぶ。
「二宮さん？」
「すみません、ちょっと気合いを」
そう笑うと二宮さんは私に向き直った。
きゅっと手に手が絡む。
.
Episode16 -3→←Episode16 深夜零時を過ぎるころ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 526人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
iCHiKA(プロフ) - みかぽさん» 読んでいただきありがとうございました！ご感想もいただけてとても嬉しいです。これからもきっと主人公ちゃんは彼と兄に挟まれて大変なんだと思いますが、そんな三人をこれからも愛していただけたら嬉しく思います。お付き合いありがとうございました。 (2021年1月16日 14時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - ともさん» ともさん、いつもありがとうございます！今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。兄さんとのお別れは寂しいですが、これからも二人…いえ、三人ですかね、仲良く過ごしてくれると思います。兄さんにも新たに日々があることを願って！ (2021年1月16日 14時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - しょうくんさん» コメントありがとうございます！甘々な二人を気に入っていただけたようで光栄です。また機会があれば彼らに会えたらいいなと私も思っています。ご愛読ありがとうございました。 (2021年1月16日 14時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
みかぽ(プロフ) - 楽しく読ませてもらいました！ありがとうございます！智兄さんと二宮くんに挟まれてる主人公ちゃんがをずっと見ていたいと思いました！！ (2021年1月14日 0時) (レス) id: 627aaeefd6 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 完結…お疲れ様でした。智くん担の私としてはずーっと智兄さんと仲良く暮らして欲しかった(￣▽￣;)これから智兄さんの新たな道が開けるのかな？なんて勝手に思ったりしてσ)>ω<*)ﾃﾍ (2021年1月12日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年10月18日 16時
