シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ31)

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Episode5 -3 ページ31

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そんなわけで私たちは会社のすぐ近くにあるラーメン屋さんで今年最初の冷やし中華を食べていた。

店の中には同じように冷やし中華を食べている人が多く見受けられて、そんな季節だなぁと思ったりする。

「櫻井先輩、何時から仕事してたんすか今日」

「そんなに早くはないよ、七時半くらいだから」

「十分早いですよ」

感覚のずれている櫻井さんにそう言いながらトマトを口に入れる。

冷たい果肉は熱のこもった身体を涼しくしてくれて頬が緩む。

「土日休めます？」

「無理かもな。不具合が片付かない限りは」

「補填どうするって話もしなきゃいけませんしねー」

まぁ最終決定をするのはアプリ担当側のプロデューサーなので私たちではないけれど。

本来だったら明日あったはずの二宮さんたちとの移植制作会議も飛んでしまったくらいだから、今週は休めないかもしれない。

「まぁ代わりに落ち着いたら好きな日に休みとれるように調整するから頑張ってよ」

「さすが櫻井先輩、頼りにしてます」

「ありがとうございます。でも櫻井さんも休んでくださいよ」

「わかってるよ。今週末のデートだって無くなったし、最近ついてないなぁ」

ため息とともにそんなことを言いながら櫻井さんは冷やし中華を口に運んだ。

仕事に真面目なところは櫻井さんの良いところである。

ただ、お付き合いしている彼女からすると「私と仕事どっちが大事なの」とか聞かれそうなタイプだ。

私は仕事は仕方ないんじゃないのと思ってしまうタイプだけど。

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