シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ24)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:151,415 hit

Episode4 -2 ページ24

.

そんな風に言われるとなんだか恥ずかしくなってしまう。

ちらりと二宮さんを見る。

すると目が合って、唇の端だけで小さく笑うと唐揚げに箸を伸ばしてしまった。

私はまた目をそらして目の前にあるビールジョッキを仰ぐ。

「そうだ相葉ちゃん、こないだのさぁ」

櫻井さんが相葉さんに向かって何やらしゃべりかける。

二人はそのまま私にはわからない話で盛り上がり始めてしまった。

人の名前らしき単語が聞こえてくるから、二人の共通の知り合いに関する話なのかもしれない。

仕方なく、という言い方をしては悪いけれど、私は必然的に二宮さんの方に顔を向けることになった。

「驚きましたね、一緒にお仕事なんて」

何を話していいかわからず私はこの数日でもう何度もした同じ話を繰り返す。

二宮さんは嫌な顔もせず「そうですね」と相槌を打ってくれた。

「天からの贈り物です」

さっきと同じ言葉をつぶやく二宮さんに私はおずおずと返事をする。

「そう…ですかね？」

「そういうことにした方が素敵ですよ」

またロマンチックな言い回しをした二宮さんは「それに」と言葉を区切る。

「俺のことを思い出してもらうって名目より、ずっと飲みに誘いやすいですし」

「えっ」

「なんたって仕事仲間ですからね」

二宮さんの目が私の目をとらえる。

お酒が入ってるからかちょっと赤い顔の二宮さんは楽しそうにきゅうと口角を上げた。

「ねぇAさん、今度は二人で飲みに来ましょうね」

「！」

「だってほら、そういう約束でしょ」

ふわりと笑みを浮かべながら二宮さんが言う。

私はかあっと顔が熱を持つのを感じながら強引に視線を逸らした。

「んふふ」と二宮さんが笑う吐息が聞こえてくる。

至近距離であんな風に笑うのは反則だと思う。

正確には約束をしたわけではないはずなのに、今の私はそんな言葉の綾を指摘することもできなかった。

ドキドキと慌てたように音を立て始める心臓を落ち着かせようと私は唐揚げへと箸を伸ばすのだった。

.