シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ3)

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Prologue -3 ページ3

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そう思いながらも一応そう聞いてみると、二宮さんは色素の薄い眉を犬みたいに下げて残念そうな顔をした。

「そうですか……いえ、すみません急に」

「いや…こちらこそすみません…」

何に謝ってるのか自分でもちょっとわからないけど、あまりにも悲しそうな顔をするものだからつい謝罪が口をつく。

「はいビールお待ち」

タイミングがいいのか悪いのか、相葉さんがカウンターの向こうから二杯のビールジョッキをガタンとテーブルに置いた。

私と二宮さんはそろって「ありがとうございます」なんて呟きながら手を伸ばす。

「お酒、お好きなんですか」

「え、あぁ…嫌いではないですが…」

ナチュラルに話しかけられて反射的に返事をする。

二宮さんは私に向かってなぜかビールジョッキを掲げると可愛らしく笑いながら言った。

「じゃあ、俺のこと思い出すまで付き合ってもらえますか」

「え…」

カチンと私のジョッキに二宮さんのジョッキがぶつけられる。

二宮さんはにこにこ笑いながら一口目を飲むと「あぁうま」と以外にも低く男の人らしい声を発した。

私はようやく言われた言葉を理解し始める。

「…あの、付き合うって…」

「俺とデートしてください」

「え、お酒じゃないんですか？」

「訂正します。お酒飲んで、それからデートもしてください」

「……はい？」

何を言われているのか理解できず色気もなく怪訝な声が出る。

けれど二宮さんは気分を害するような様子もなく、その整った顔に変わらずにこやかな笑みを浮かべたまま私の目をのぞき込んだ。

「俺、大野さんのこと好きなんですよね。だから、俺のこと思い出してくれるまで俺に付き合ってもらいます」

「……」

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