シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ2)

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Prologue -2 ページ2

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翌日、金曜日の夜。

「悪い、ちょっと外すわ」

「はーい」

櫻井さんががたりと席を立った。

広すぎない店内には仕事を終えた社会人たちの愚痴のようなそうではないような盛り上がる声が響いている。

店長の相葉さんが私の空になったジョッキを指さして「お代わり要ります？」と言うものだから、私は櫻井さんのジョッキにまだビールが残っているのを確認してから「はい」と頷いた。

私たちがよく利用する相葉さんのお店「相愛亭」は今日もテーブル席が満席なほどにぎわっている。

昨日の約束では松本くんも一緒に来る予定だったのだけどスクリプトチームはかなり重労働だったのか疲れ果てた顔で「俺帰りますすみません」と言いおいてさっさと帰ってしまった。

土日に疲れが取れればいいけれど。

なんたって来週はイベント本番だ。

「いらっしゃいませー、カウンターどうぞ」

相葉さんの声に続いて隣の席に男の人が腰かけた。

スーツを着ているからサラリーマンのようで、カウンターの向こうにいる相葉さんに「とりあえずビールで、生中」と頼んでいる。

私は何となくそっちに目をやって、そしてその男性とばっちりと目が合ってしまった。

「あ」

ぽつり、目の合った男性がつぶやく。

その目はどこか子犬のような、つぶらに見えるものだった。

「あの」

「え…あ、はい…私ですか？」

「ええ、貴女です。失礼ですが、大野Aさんですよね？」

「えっ…」

私の名前を知ってる。

というか、私を知ってる？

私は眉間にしわを寄せた。

男性は私の表情に嫌な顔をするでもなく、童顔な顔立ちでにこりと笑いながら言った。

「俺、二宮和也です。覚えてませんか？」

「……はあ」

つい間抜けな声を出しながら私はその男性、二宮さんの顔を凝視する。

さっと全身を見回してから、首をかしげた。

「すみません…どこかでお会いしてますか？」

正直なところ全く心当たりがなかった。

こんなイケメンさん、一度会ったら忘れないと思うんだけど。

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