39−合言葉 ページ39
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「まぁまぁ姫君、もう少しゆっくりしてけよ。
ほら、プレゼントだ。王子の秘密基地の花」
「え、あ、ありがとう…?」
流れる動作で胸元からバラを引き抜くと、彼女の手に持たせる天元騎士。
戸惑いながらもそれを受け取ったが、今し方後ろで革靴が階段を上がってくる音を確認し、我に返った。
「あの…王子様は本当に素敵で、賢いお方です…! 口は乱暴だけれど誰よりも優しいの…わ、私が言える身分ではございませんが、一生忘れないと、お伝えください…!」
「…!」
天元騎士が呆気に取られた様に口をぽかんと開ける。
その間に、さっと一礼して彼の脇を走り去るA。
肩で息をした王子が天元騎士の方まで辿り着くと、王子らしからぬ形相で彼を睨む。
「引き止めろって合図したよなァ…!」
「悪ィ、お前さんを優しいなんて褒めるモンだからびっくりしちまってな」
「アァ!? ブチ殺す…!」
「オイ王子…。公衆の面前ではちゃんとしろ」
大きな舌打ちと共にまた走り出す王子。
そんな姿を追いながらため息をついた天元騎士は、見回りをしていた同僚を呼び止めて舞踏会のお開きを知らせる様に言ったのだった。
「オイ、待てA! まだお前の事を聞いてねェ!」
「…王子様!?」
「教えてくれねェと迎えに行けねェ!
俺はお前を愛してる!」
「…!」
階段を駆け下り、待っていた従者の元へ走り寄るAが初めて動きを止めた。
王子は、もう追いつけないと観念したのか階段の途中で息を切らして叫ぶ。
_身分違いの恋。彼は王子で、私はただの召使い。
それでも、彼が私を迎えに来てくれるというのなら。
「……見つけに来て。また会えたら、その時は…」
「_必ず見つける!」
「大好きよ、……オオカミさん」
「……!」
馬車が駆け出す。
そしてそれの数分後に宮殿の馬乗りの騎士達が彼女を追いかける。
呆然としていた王子_基、実弥の後ろから大股で階段を降りてきたのは、天元騎士。
「あーあー。逃した魚はでけェぞ?
一応杏寿郎引率して追手を出したけど」
「…逃してなんかねェ。アイツが未来の王妃だァ」
「……は? いやいや、名前以外何も知らねェんだろ? 見つかりっこねえよ」
「いや。…アイツだけが俺の本当の姿を知ってる。
_俺が一体何者か」
彼女への執念にも近い恋情は最早宇髄には羨ましくさえあった。
「良い娘を見つけたな」
「やらねェぞ」
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時