30−レッスンの成果 ページ30
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玉座から大広間へと続く大階段。
そこから澄んだ声が聞こえ、両者は途端に口をつぐむ。
見るとそこにはお付きの者と共に立つ大国の王女が凛と立っていた。
すぐさま体制を立て直した天元がスマートに腰を曲げる。
「これはこれは、カナエ王女様」
「下がっていいですよ、ナイト」
「……失礼」
美人の登場に手の甲に口づけでも落としてやろうといった魂胆だったが、花のような瞳が制止したので、彼はにこやかに王子の一歩後ろへ下がる。
そして相手役の天元が居なくなった事で自分に回ってきた王子は天元騎士にだけ見える角度でこれでもかというほど嫌な形相をしたが、すっと玉座から腰を上げると、信じられない程爽やかな笑顔で王女に向き直った。
「肖像画で見ていたよりもずっとワイルドで男らしいのね
素敵だわ」
「ありがとうございます、カナエ王女。本日は遠路ご足労下さり嬉しく思います。
小国ゆえ、ささやかなパーティーですので王女に満足頂けるか不安ですがぜひごゆっくり羽をお伸ばし下さい」
「ありがとう。_それで…あなたがここで動かず私のことを迎えに来なかったのも、ささやかさが理由かしら?」
「物は言いようですね。そう捉えられたのならこちらも助かります」
「あら、そうやってごまかして。私は騙されないわよ」
先程まで天元騎士とガラ悪そうに喋っていた口調はどこへやら。
まさに王子の風貌でカナエ王女の手を取り、その甲に唇を落とした王子。
言葉とは裏腹に、王女は彼のにこやかな笑顔に満更でもなさそうだった。
「王子、今日の舞踏会、国民全員を招待したんですって?
それに……気の合う王女が居たら結婚すると噂で聞いたのだけれど……」
「はい。どちらも噂を信じて頂いて結構です
僕を捜す為に国民も協力してくれたのです、これは僕なりの謝礼ですから」
「そう……見かけによらず優しいのね」
カナエ王女の花の笑顔にも、表の表情を崩す事なく腰を低くしたままの王子。
_2週間のレッスンが活きた。
心の中でそうは思いながらも、天元騎士は後ろで笑いを堪えるのに必死だった。
「それでは、全ての淑女の入場が完了しました_
これより、王子に最初のダンスのお相手を決定して頂きます」
どうやら王女と話し込んでいる間に入場が終わったようだ。
彼女が来たかどうか確認出来なかった事と、つまらない王女との雑談に付き合わされた理由も相まって…王子は心中で大きくため息をついた。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時