災害医療 ページ44
「ん...？」
ポンポン、と頭を叩かれ目が覚める。
「鬼嶋起きろ、諸島で震度７だ。
台風も重なって西島あたりがかなり酷いかもしれん」
「えっ、」
「ここは受け入れ解放しておく、
ここも余震じゃかなり揺れるぞ。」
「いつですか…？」
「今さっきだよ今さっき」
そう言って起こしてきた先生はスマホのニュース画面を見せてきた。
当直室では２秒間静かな時間が流れる。
窓の外からはビュウビュウと雨風の音がして...
「DMAT待機します、」
「頼んだ」
___DMATとは...
地震、台風などの災害時、４８時間以内に活動できる機動性を持った医師達が組む災害派遣医療チームのことである。
指定されている病院内に１団体ずつあり、
この隠久ノ島病院も、日本海側の離島に赴く一番重要なDMATの拠点でもある。
DMATは昔からあるものでは無く、２００５年に厚生労働省の指導により発足した。
その理由は...
阪神・淡路大震災。
当時、“もっと医療体制が整っていれば救えた命”と言う例が多数報告されたのだ。
DMATは基本、
医師が１〜２名、看護師が２名、“ロジスティック”と呼ばれる業務調整係が１名の計４〜５人で構成される。
「いつでも行けるようにシャワー浴びてきちゃいます」
「わかった。」
私はロッカールームにある鞄とベストを放り投げておくと、シャワー室に直行した。
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「風が強いな...」
「ヘリ飛べますかね...」
今のところDMAT本部からの始動命令は出ていないが、この先何が起こるかもわからない。
その上防災無線の混雑が原因で本島や西側の諸島の情報が全く届かない。
「連絡が来ないかもしれない。
その場合お前は受け入れと“トリアージ”を頼む。」
「了解です。」
「俺も行こうと思う...」
「ダメです。
いくら先生がDMAT研修を受けていたとしても、この病院には貴方が必要なので。」
鬼嶋は防災着を着て、“DMAT”と書かれたチョッキを切ると、大きな荷物を持って病院の出入り口にて待機を始めた。
「このまま始動の連絡が来なければいいんですけど...」
「...そうだな、」
「...あ！
西島にて避難所開設、DMAT緊急招集だそうです！
ヘリ動きます！」
もし日本海側の離島で災害が起きた場合、
いち早く駆けつけられるのは、同じく日本海側にある病院のDMAT達だ。
鬼嶋は俺の両肩をバシッと叩くと、“シマたのんます！”と言ってDMAT隊達と暴風の中ヘリに乗り込んでいった。
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作者名：長官 | 作成日時：2020年5月3日 17時
