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触らなければ大丈夫 ページ42

「なんだぁ〜カエルかぁ〜...

とは絶対にならないですッ!!!!」

「じゃあ鬼嶋の家に邪魔させて貰えばいい。
こいつ意外に料理家事、全般できるらしいからな。」

院長は親指で鬼嶋先生を指すと、またクルッと椅子を半回転させてパソコンに向き直った。


「意外ってなんですか?!
全く...先生は私の内に秘めし本当の女子力を知らないんだから...
いいよ?今日からうち泊まっても。」

「いいんですか?!」

「まぁ今日私当直でいないけど」

「えぇえええ...」


ハハハッと豪快に笑って私の肩を叩いた鬼嶋先生。


今日もどうやらいつも通り診察が始まるみたいだ。


昨日みたいにグダグダと酔い覚ましに1日使う訳にはいかないので、腰を持ち上げた鬼嶋先生について行った。

_________________________________


「基本的に島の病院(ウチ)初産婦(プリミ)は受け付けてないんだ。ノーリスクな経産婦(ムルチ)だけ。」


「え…じゃあ、
ここはお産がめちゃくちゃ少ないってことですか」


「そう。
妊婦全体の四割しかここじゃ分娩できない。」



.





.




.



「え、それって意味あるんですか…」


「意味?」



下屋は至極単純な疑問を彼女にぶつけた。


だったら病院である必要はない。

助産院でだって産めるし、ノーリスクなお産しか受けていないのであるとするならば、彼女からしたら“病院の信用を一番に見ている”ようにしか見えないのだろう。


「そんなの...産科医(ギネ)じゃ無くてもできるんじゃないですか…?」

「...」

初産婦(プリミ)経産婦(ムルチ)も受け入れてあげるべきなんじゃないんですか?」



下屋は自分の言っていることの意味をわかっていないようだった。



Aは静かにカルテを置くと、いつもよりも低い声で一言下屋に呟いた。



「島...舐めんなよ。」



________________________________



子供の産めない島。


そう言われるのが悔しくて悔しくて仕方がない。


今まで“産婦人科”と言うものが存在していなかったこの島のこの病院で、初めて産科医(ギネ)を名乗ったのは荻島先生だ。

総合医の傍ら、子供の産めない島を子供の産める島にするべく、産科を作ったのだ。


「血液製剤もない、手術器具さえ滅菌待ちが起きる、分娩室(LDR)でさえ一部屋、そんな環境で“切迫早産ウェルカム”、“常位胎盤早期剥離(早剥)ウェルカム”、でできるって思う訳?」

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作者名:長官 | 作成日時:2020年5月3日 17時

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