ここですか... ページ41
「はい、着いた。」
「え？ここですか...」
「そ。マイナスイオン感じるでしょ」
「...何か感じちゃいけないものも感じてます...」
鬼嶋先生は山奥にあるどでかい古民家風の建物の前で私と荷物を下ろした。
木で囲まれていて...
見上げるとまるで筒の中から見上げたくらいにしか空が見えなくて...
ザワザワと草木が揺れる音が心を逆だてる。
まぁ一言で言えば“ヤバそう”。
鬼嶋先生はそっと連絡先を渡してくれるあたりすごく頼りになるがそれ以上に私は思うことがある___
「え、このどでかい建物に私一人ですか？」
「ここは人口密度低いから、お隣さんは１キロ先ね。
じゃあ何かあったら連絡ちょーだい？すぐ来るから。
今日は私も帰るから。」
そう言って私に手を振って踵を返す鬼嶋先生___
「ちょまちょまちょま！！！！」
「何？何か忘れた？」
「いや、あ...あの...ここって...」
「あー...ここね...
...
...出るよ。
かなりやばいのが。」
ムリイイイィイイイイィぃ！！！！！
___________________________________
翌日。
恐怖からやってきた寝不足を纏いながら支給されていた自転車を漕ぎ、病院に出勤した。
すると医局には朝早くからしゃっきりとした様子の鬼嶋先生と院長の姿があった。
「んー、どうですかね。
明後日のカンファレンスでは...
ッあ。おはようカエちん。昨日はよく寝れた？」
カ...カエ...ちん...？
鬼嶋先生は１日と言う短い間で私を“カエちん”と呼ぶことに決めたらしい...
つくづく読めない人だ。
「お。おはよう下屋先生。
...やっぱり出た？」
院長はその言葉と共に椅子を半回転させ、こっちを向く。
その表情はニヤッとしていてまるで...
「“出る”ってなんですかッ？！！」
「「...」」
「院長？！鬼嶋先生？！何か言ってくださいよ！！！
私あそこに一週間泊まるんですよ？！」
「「はははッ！」」
二人して手を叩いて笑ってらっしゃるけど...
私からしたら大の死活問題だ。
もしあそこが俗に言う“出る”場所なら...
その“出たもの”はすでに私に憑いてる...？
「うわぁあああ無理無理！」
ブルブルと頭を振ってスクラブの裾を握る。
無理無理無理！！
やっぱり先生のお家にお邪魔する！！
そう決めた途端、院長は顔を上げた。
「まぁ出ても触らなければ大丈夫だろ。
ここら辺は毒ある奴いないだろうし。」
「そうですね。攻撃しなければ大丈夫です」
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作者名：長官 | 作成日時：2020年5月3日 17時
