この子たちはみんな ページ36
「この子たちはみんな孤児です。
親が捨てた、赤ちゃんポストに入っていた、
または私たちみたいなお医者さんからの依頼でここにくる子、いろいろ問題を抱えた子たちです。」
泣いている小さな子供に近づいた鬼嶋。
「どうしたの。」
「おばちゃん僕のこと迎えにきたの?
ママになってくれるの?」
「...今日だけね。どうした、寝れないのか?」
「うん、僕怖い夢見ちゃったんだ、
お母さんが僕を殴ったんだ」
「そっか、怖いねそれは。おいで。」
男の子はムクリと起き上がると、あぐらをかいた鬼嶋の膝の上に座り嬉しそうにしている。
いくら子供の少ない島といえど、これだけ孤児はいるのか。と、院長という立場でありながら今まで大きくは考えていなかったことが急に悔しくなった。
「あ、僕おじちゃんのこと知ってる。」
俺の足に触れた小さな子供。
ツンツン、と人差し指で突くとニンマリ笑った。
彼の枕にはマジックペンで“タイセイ”と書いてあった。
きっとさっき鬼嶋が渡してきたエコー写真の子なのだろう。
「このおじちゃん、病院の偉い人なんだよ?
そうごうい、って言って、なんでもみてくれるんだよ?かっこいいおじちゃんでしょー?」
「かっこいい!」
「おじちゃんとお話ししてみ?」
鬼嶋はそういうと、ズズズ、とタイセイくんの幼児用の布団を引っ張って、こっちまで引きずってくる。
「ここには、本島からも含め、色々な事情で助けを求めてやってくる赤ちゃんがいます。
その多くは様々な地からやってくる養子縁組の両親たちに引き取られていきますが、
この子のように、自閉症などが理由で里親が見つからない場合があります。」
鬼嶋は今度は二歳くらいの夜泣きをし出した女の子を抱き抱え、そっと揺らしながら言った。
「私たち
でも私は個人的にその後が大事だと思ってます。
育てられないから乳児院、
愛せないから児童相談所。
まぁ、それも正解なんですけど。
すべての子供たちに平等って難しいわけですよ。
でも、せめて、私はここに一ヶ月に一回は顔を出して、1日だけ全員のお母さんになってあげるんです。
この子たちがもし私たち医者がどうにかできる存在ならこんなことにはなっていませんが、
私はなんとなくこの現状を知って欲しかったんです。」
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作者名:長官 | 作成日時:2020年5月3日 17時