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満月の夜に ページ34

「ルートとって!
赤ちゃんの心拍は?」

「正常です!」

「まぁ...産まれても大丈夫かな...
子宮口は?」

「六センチです!」

「あと四センチなんだよなぁ〜」


ポリポリと後頭部を掻いて渋い表情を見せるA。

さっき言ったDD双胎のお母さんのお産が始まろうとしているのだ。

初産婦(プリミ)である彼女は本来なら直前まで島で様子を見て、明日フェリーで海を渡ってそっちで産んでもらう予定だった。

しかし子宮口は開き始め、35週であることから助産師でどうにかできそうだった。

いたって普通の産気づいた状態と言える。

双胎なので注意深く見るべく、エコーを取ったけれども異常は見当たらず、このまま順調にいけば二時間後には二人生まれる。


「エコーとったけどruby:発育不全:F G R)もみられないので、このまま分娩に持って行ってください、
もし何かあったら連絡お願いします。

お母さん、痛いよね。頑張ってるね。
大丈夫、私がいるし、ここにはベテランの助産師さんいっぱいいますから。」


初産婦(プリミ)である彼女がいきなり双子なのだから大変だろう。

そう思うとすこし心配ではあるが、切迫早産でもなく、普通にすこし陣痛が早いだけだった。



「ふぅ...
あとでピッチに連絡くるかも。」

「あ、わ、わかりました。」


診察室に戻ってきたAは椅子に座り、最後である次の妊婦さんの診察を始めようとカルテを開いた。



「こんにちは〜調子はどうですか〜?」

「すこしお腹が張っていて...」

「痛みはありますか?」

「すこし、胎動が大きいので。」

「急激に痛くなったこととかはないですか?」


ペンを走らせながらそんなことを聞いていると、徐々にお母さんの表情は険しくなっていき、最後は“う”と声を漏らし、私の方へ前屈みに倒れ込んだ。


「中島さん?!」


「陣痛です..先生....絶対これ陣痛です...」


__どうやら今日は忙しくなりそうだ...

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作者名:長官 | 作成日時:2020年5月3日 17時

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