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たわいもない ページ23

雲が晴れ始め、やっと島らしい燦々とした太陽が見えて海がキラキラ光る。

窓を開け、肘を引っ掛けると長い一直線の道を抜け、海沿いの道に逸れた。


「なんでこっち?」

「あっち舗装されてないから揺れるでしょ。」


ハンドルを切りながらつぶやくと、姉は嬉しそうに“ありがとう”と柄にもなく照れ笑った。


「運転丁寧になったね。」

「まぁ...人の命預かる仕事についた以上は、ね」


ハハ、と二人して乾いた笑いを浮かべると、姉は幸せそうに笑って私を見てくる。


「あんたがまさかペルソナ辞めるとは思わなかった」

「あんたがまさか島に来るとは思ってなかった。」


私の言葉を無視して、スマホで何やら音楽を流し始めた姉。

クラシック調な聞き覚えのあるピアノ。

BABYだった。


「あんたの子供も早く見せてよ。」

「無理だよ〜姉ちゃんみたいにすぐ男見つかる様な場所じゃないからねこの島。」

「鴻鳥くんとかいいじゃん」

「遠ッ。」

「否定はしないの?」

「まぁ確かに告られたけど。」

「えぇッ?!」


実に会うのは十年近くぶりだと言うのに、高校時代となんら変わらない会話をしていた私たち。

恋バナだって、下世話な話だって、ゲラゲラ笑って話してたのがこんなに落ち着く物なのかと感心に至るほどだ。


「私個人的に四宮くんも良いと思うんだけどどう?」

「絶対あいつとは無理だ」

「なんで?いいじゃん」


と、話が盛り上がってきたところで病院の駐車場につき、運転席を出ると助手席側に回った。

姉がどうやら先生に挨拶したいらしい。

ドアを開けると、姉はゆっくりと大きなお腹を抱えて車から出てくる。

「一緒に行くよ、」

「ありがとう、」

入り口に入り、ゆっくり歩く姉に合わせて荷物を抱えた私は人の少ない待合室に姉を座らせ、受付の女性に声をかけた。

「あの、荻島先生います?」

「そろそろ帰ってこられるかと...」

「そうか...今日往診か」


今日は老人ホームかどこかの往診だとか言っていた気がする。

いつも自転車で行って帰ってくるからそんなに時間はかからないはず。

と、ソファに戻ろうとした途端、ナイスタイミングで入口から先生が入ってきた。


「あれ、どうした?今日遅番だったか?」

「あ、いや、姉が帰ってきたので挨拶したいらしく...」

「あぁ、そうか!」

ぽん、と手を叩いた先生。

実は姉は研修期間にここの産科で研修していた時期があって、その時に世話になったのだと言う。

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作者名:長官 | 作成日時:2020年5月3日 17時

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