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追い討ち ページ25

明け方いつものようにスッと目が覚め、歯を磨いていると、携帯が震えた。

“助けて、”

と書かれたチャット画面。


そのトークルームは姉とのもので、口を濯いで急いで部屋に出る。

すると、ベッドの下でお腹を抱えて悶えている姉が視界に入った。

急いで箱の中から補聴器を引っ張り出して耳に着けるが、なぜか反応しなかった。

...こんな時に限って充電池が寿命を迎えていたらしい。

「ど...どうしよう!!」


手をフルフルと振った姉。

朝は耳が聞こえない私のためにいつも手話を使って会話してくれていた。

“痛い”

と言った姉は、ひどく汗をかき始め、自身の身に何が起こっているのか感じ始めているようだ。

「お腹触るよ、」

板状硬が見られ、痛そうにしていることから胎盤が剥がれている可能性がある。


救急の電話もできない今、徐に携帯を掴むと、先生に助けを求めた。

“院長”

と書かれた画面では通話中のマークが浮かんだ。

向こうが喋っているかもわからない中、
必死に姉が早剥を起こしている可能性を伝えた。


「伝わって...お願い...伝わって...」


ここから病院までは少し遠い。

ましてや耳の聞こえない私が運転をするのは危険だし、何より急がないといけない。

これが伝わっているならば病院救急車が先生を乗せて来てくれるはず…

「“落ち着いて”」

ブルブルと震える手で私に落ち着くよう伝えてくれる姉。

出血はどんどんひどいものになっていき、床を真っ赤に染め始める。

これは確実に危ない。

自分がどんな状況かわかっているだろうに、姉は自身の身より私の心情の心配をしてくる。


「“大丈夫、絶対大丈夫。私がいる”」


心臓がバクバクと脈を打っているのだけはわかる。



早剥は赤ちゃんが危ないだけではない。

人によっては出血多量で母体が死に至るケースもある。ショックの結果痙攣を起こす場合だってある。

自分がどんどんパニックになって行くのを感じた。

落ち着かせようとすればするほど息がしづらく感じて、また苦しくなる。

姉は私の手首を勢いよく掴むと、痛い癖に笑って見せた。


「“馬鹿”」

おでこの前で手を動かした姉。

出血多量で痛みを訴えている妊婦を前にソワソワすることしかできないのは何年ぶりだろうか。

今私ができることは助けを待つこと。

姉の言葉と笑顔に冷静になれた。



急いで玄関を開けて、救急車がいつきても平気なようにする。

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作者名:長官 | 作成日時:2020年5月3日 17時

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