伝えたいのに伝わらなくて (ページ16)

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誰にも知られたくない、秘密ページ16

私とタケシお兄ちゃんには、誰にも言えない過去がある。

言えない。だってこんな事言ったら、きっとコブラもスモーキーも。
ピーも皆離れていってしまうから。

タケシお兄ちゃん……きっとお兄ちゃんも辛いはずなのに。

いつだって守ってくれたね。

だって私は、私とタケシお兄ちゃんは

九龍会の、会長の孫だから。

この秘密は"三人"だけの秘密。

なんで三人なのか。

それは、

私とタケシお兄ちゃんが泣いていた時。

手を差しのべてくれた人がいるから。

それは、 "紀久"。

タケシお兄ちゃんと私が心を許した人。

あの人だけは知っている。だから紀久にはなんでも話せる。安心できてしまう。

あのきだるげな表情の奥には、優しさがある。

その瞳の優しさは見ればわかる。

でも怖い。

誰かに知られる事。

あいつらが私達を探しに来るかもって事。

誰かに知られれば、きっと皆。私達を嫌いになるから。

皆の笑顔が向けられなくなる事に毎日怯えて。

身を隠して生きて。

私達はこの世界に必要とされていない。

タケシお兄ちゃんは、大人と接するのが上手だった。

いつだって大人の喜ぶ事を知っていた。

でもまだ幼かった私はそうじゃ無かった。

そんな私のせいで、代わりにタケシお兄ちゃんがいつも

血を

涙を

流していた。

朝がくるのが怖くて。このまま朝が訪れなければ良いって。

そう思いながら生きてきた。

今もタケシお兄ちゃんの背中の傷は消えない。

私達二人に刻まれた九龍会の印は。心の痛みは、秘密は消えたりしない。

愛の意味なんて知らない。

生まれた場所も誇れない。

罪を繰返して。

傷は消えなくて。

それでも未来を、希望を信じたくて

汚れた手でやっと掴んだこの幸せが

消えないで欲しい……

どうにもならないのだから、涙なんてもう忘れた。

でも、

私達から、この幸せだけは。この仲間は、家族は。

失わせないで。

もし神様がいるのなら

どうかもう少しだけ。幸せな夢を見させて…