【DQ11】亡国の悲劇

魔王を自称する者 ページ33

私達は、人間大程ある黒く禍々しい球体に近付いた。

「なにもじゃ、これ？」

「触っちゃだめよ！ 」

ソレに触れようとしたミドンジャの左手を掴んで、右脇に手を差し込み肩に乗せる。


『コオオ、オオォォオォ』

「え！？」


球体が醜く呻き始めた。

「構えて」

「はいもじゃ！」

その黒い物体に剣を向け、斬りかかろうとすると。

「……あれ、体が」

「う、うごかないもじゃ〜〜！！」

「正当防衛だ、悪く思うな」

球体の背後から出てきた人影に視線だけを向ける。薄気味悪い笑みを浮かべ、趣味の悪いローブに身を包んだ魔人がそこに立っていた。

「誰……？」

「私はいずれこのロトゼタシアの王となる者だ。小手調べにこの里の魔物を洗脳してみたが、案外弱いものだな。まさか人間如きにやられてしまうとは……」

ロトゼタシアの王？ 何を言ってるんだコイツ。きっと頭がおかしいのだろう。

というか、ギガンテス達の里をめちゃくちゃにした元凶はこの魔人だったのか。なら何が何でも今ここで決着をつけねば。

私は内から溢れる魔力を絞り出し、体内に循環させる。魔人の悪しき魔力に支配された体は徐々に言う事を聞くようになった。ついでにミドンジャの金縛りも解除してやる。

「もじゃっ！」

「ほう、自力で抜け出すか」

「王になるとか血迷ったこと言ってんじゃないわよ。 あんたは私が此処で倒す！」

私は早速魔力覚醒の詠唱を始め……。

「まあ、待て」

弾かれた。

え、？


「……は」

「そう急ぐな。我に戦闘の意思はない、今の所は……だが」

なあに、いまの。

私の詠唱が、途中で切れた。妨害魔法なんて聞いたことない……古代魔法か何か……？

ああでもこれだけはハッキリした。

私は魔法で奴に勝てない。

「此度は実験の視察の為出向いた次第。そして新たな素材を見つける為……」

「何を言ってるの」

「お前達人間が率いる軍に一人……良き人材が在る。負の感情に支配されている」

ゆっくりとねちっこく喋る魔人は、鋭い野心に満ちた目を細めて笑った。

「良い、良い……これだけで大収穫といえよう。……では、さらばだ。ゼタ……いや、人間よ」

「待ちなさい、何の話をしてるのよ！！」

黒い球体と共に、魔人はゆっくりと消え去る。私が剣を振り上げると、奴は左手を掲げ鈍い光を放った。


「うっ！」

「A！」


い、意識が飛んでいく……。

だ、だめだ……私は……。







私は……どうして彼を助けられなかったのだろう……。

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