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呼吸困難 ページ10

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シャーペンをノートの上で走らせる。
苦手な数学は度々手が止まってしまうけれど。xやらyやら、さらにはnまで。頭がこんがらがってしまう。

学校の自習室はいっぱいで、みんな図書室や図書館に行ってしまったけれど、なんとなく教室の方がやりやすくて私は教室で勉強する。
グクは今日は先に帰ってしまった。


「A」


途中式で分からなくなって手を止めていた時、よく知る声が私の名前を呼んだ。
反応したくなかったのに、分かりやすくびくりと肩を揺らしてしまったのだった。


喉の奥がパサつく。一気に水分は失われて、胸のあたりの皮膚のすぐ下まで心臓が跳ね上がっているように感じるくらい、呼吸が苦しくなった。

何も言葉を発せなくて、シャーペンをぎゅうっと握っていると、力を入れすぎて震えてしまった。


「無視はダメだろ?」


ゆっくりと足音が近づいてくる。

どうしてこんなにこの人が怖いのだろう。つい最近まで大好きで、捨てられたことが悔しくて、そのくらい思いは強かったはずなのに。

怖い、気持ち悪い。


私を操ろうと、都合の良い存在にしようとするその声色が、表情が、全て。
 

「私、もう帰るので」
「分からないところなんじゃないのか? そこ」


教えるよ、と前の席の子の椅子に座って教科書に目をやる。難しいところだな、と微笑まれてゾワゾワした。

何、この人。何がしたいの。


「なんか悩みとかないのか? なんでも言えよ。前みたいにさ」
「……なんで、」
「Aが大切な生徒なのには変わりないよ」


息苦しくて死んでしまいそうだった。
バラされると困るからまたすがりつかせようとしているのか、口封じのために優しくしようとしているのか。


「……帰ります。さようなら」
「A!」
「っ!」


ノートを片そうとした腕を掴まれて、反射で振り払ってしまった。涙が瞳にたまっていくのがわかった。


自分の席だしもう良い。
何もかも置いたまま、少ししか教科書の入っていない薄い鞄を持って教室を出た。




あの空気の中にいると、肺が圧迫されて呼吸ができなくなるから。

もういらない→←あのキスは人工呼吸だった



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ちよ(プロフ) - mochiさん» お返事遅れてすみません!テヒョンさんの不思議な魅力はいつまでも青く綺麗なのだろうなと思って書きました。細々とですが執筆は続けたいです( ˘ω˘ )ありがとうございました! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
mochi(プロフ) - 今更ながらちよさんの小説を見つけ、読ませていただきました。私もこんな青春時代を過ごせる仲間が欲しかったなぁって思いましたし、テヒョンのかっこよさが私の心をキュンキュンさせてくれました。これからも素敵なお話書き続けて欲しいです。終わってさみしい。 (2020年11月15日 20時) (レス) id: 7aaaff3998 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - あきさん» 尊い高校生の青春の日々は大事にしたいなあとしみじみと思いますね……( ˘ω˘ ) (2019年11月3日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 青春したくなりました (2019年11月2日 0時) (レス) id: 93ffcf3bfd (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - BeBeさん» わあああコメントありがとうございます( ; ; )!!! 更新バシバシがんばります!! (2019年10月30日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちよ | 作成日時:2019年10月18日 23時

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