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あの日あの時 ページ12

突然お邪魔した私にも、ナムジュンさんは嫌な顔一つせずあたたかいココアを出してくれた。淹れてくれたのはホソクさんだったけれど。

ナムジュンさんは不器用らしい。放っておくとすぐに物を壊したり食べ物も焦がしてしまうから、ホソクさんは定期的に一緒にご飯を食べているそうだ。


「学校で何かいやなことでもあった?」
「……ええっと、」
「あ、話したくないなら別にいいからね。ただ気になっちゃって」


ごめん、と付け加えて、ホソクさんは卵をかき混ぜる手を動かした。
私と一緒にテーブルに座って会話を聞いていたナムジュンさんも私を気遣おうとして、ブランケットを取ってきてくれた。本当に優しい人たちだ。

「私、テヒョンさんと出会った日、大好きだった先生に捨てられたんです」

カシャン、とお茶碗と箸が当たった音がして、それ以降止まってしまった。ホソクさんの目がこちらに向いている。

「私は勝手に本気になってて、でも先生はそうじゃなくて。頼れて、縋ることができる……少し依存していたのかもしれません。そんな人、だったんです」

無意識に手に力が入る。
私の手を包み込んでくれるのはナムジュンさんの手だった。
もういいよ、と言ってくれているような気がしたけれど、大丈夫ですと言うように首を横に振った。


「その日、何となく海に行って波を眺めていたら、テヒョンさんに声をかけられて。悪い子になる?って、次の日には夜に連れ出してくれて」

思い出しながら話していると、その時がキラキラと蘇ってくる。私が大切にしたいのはそんな時間なのだ。


「ずっと聞き分けのいい子が何もかもうまく行くんだと思ってました。でも、もっとわがままを言えばよかったなと思いますし、無茶とかしてみればまた何か変わったのかなって。……でもそれだとテヒョンさんに会えてないからなあ」


口にココアを含むと、ふんわりとした甘さが広がる。じんわりと心からあたたまるそのぬくもりに、少し前まで唸っていた心臓が落ち着いているのがわかった。


「その先生に、今日変に絡まれて。私との関係をバラされるのがいやだったのかな、とか、この人は一体私をどうしたいんだろうと思ったら怖くて。逃げてしまって、泣いてしまったんです」


ふわふわとマグカップから湯気が上がっている音が聞こえそうなくらい、静かなリビングになった。そうしたのは私だけど、気まずくはないことに驚いた。


もう一度ココアを飲もうとした、時。

「……あ、」

携帯が、震えた。

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ちよ(プロフ) - mochiさん» お返事遅れてすみません!テヒョンさんの不思議な魅力はいつまでも青く綺麗なのだろうなと思って書きました。細々とですが執筆は続けたいです( ˘ω˘ )ありがとうございました! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
mochi(プロフ) - 今更ながらちよさんの小説を見つけ、読ませていただきました。私もこんな青春時代を過ごせる仲間が欲しかったなぁって思いましたし、テヒョンのかっこよさが私の心をキュンキュンさせてくれました。これからも素敵なお話書き続けて欲しいです。終わってさみしい。 (2020年11月15日 20時) (レス) id: 7aaaff3998 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - あきさん» 尊い高校生の青春の日々は大事にしたいなあとしみじみと思いますね……( ˘ω˘ ) (2019年11月3日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 青春したくなりました (2019年11月2日 0時) (レス) id: 93ffcf3bfd (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - BeBeさん» わあああコメントありがとうございます( ; ; )!!! 更新バシバシがんばります!! (2019年10月30日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちよ | 作成日時:2019年10月18日 23時

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