口付け ページ20
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「なぜ、そこまでしてくれるんですかぁ?」
そう問いかけると、また優しい笑みを浮かべて
私に歩み寄ってきた。
でも現実の彼とは違って威圧感がない。
鬼舞辻は、そっと地に生える綺麗な彼岸花を
なでた。
鬼舞辻「私は....現実の私を、お前に殺して欲しいんだ。」
「本当に無惨様なのですかぁ?
貴方は不変を愛す残酷な方というのに」
鬼舞辻「私は、現実の彼と違う。
無闇矢鱈に人を殺したりできない。というより
この意識の中では、私と君しかいないんだ。」
....話がわからなくなってきた。
?と顔の周りに浮かばせていると
彼は1輪の彼岸花を摘んだ。
彼岸花は毒があるのに、平気なのか....
「じゃあ、なぜ私をここに....?」
少し曲がりくねった彼の横髪を
すっと据うと、口角を上げた。
そして片手で、私の腰を引き寄せる。
鬼舞辻「お前の意識が戻る前に伝えたかった...
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....お前を愛している。私も、現実の私も。」
....お前を愛している....
愛しい者を見つめるような視線に
ドキッと心臓が高鳴る。
遊郭でいつも彼に言われていたのを思い出し、
彼を愛していた感覚が戻ってくる。
じっと鬼舞辻の切れ長の目を見つめれば
苦しげに瞳が揺れた。
鬼舞辻「....だが、君の心の中には
既に誰かがいる。私は、その人と幸せになって欲しいのだ。
だから、現実の私がどれだけお前を求めてきても必ず堕ちないように。」
....私の心には誰が....
自分でも分からない。
鬼舞辻が握っていた彼岸花をそっと
地面に落とす。
腰を引き寄せる腕の力が強くなり、彼の体に
更に密着した、と思えば
唇に柔らかい感触が伝わってきた。
背中に腕を回されてきつく抱きしめられる。
その熱に応えるように、私も逞しい背中に
腕を回した。
角度を変えながら、愛を確かめる口付け。
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「ンッ、む、無惨様....」
離れるのを惜しむように唇を啄み、
吐息が交ざったのを感じて美しい顔が離れる。
場違いだが、鬼舞辻の今にも泣きそうな
顔に吹き出しそうになった。
....こんなに愛されているのだと、自覚する。
いつもの残酷そうな顔ではなく
これ以上ないほどの穏やかな顔に心做しか
安心していた。
鬼舞辻「....さらばだ。」
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またも、意識が放れそうになる。
その前に一言言いたかった。
「私は、あなたを愛してた....!」
そう叫ぶと、彼は安心したように
笑みを浮かべた。
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作者名:美麗 x他1人 | 作成日時:2020年3月18日 21時