Summer time Days！2【wrwrd】【all】【合作短編集】 (ページ10)

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『それにしても、貴女をこの夏祭りでお見掛けするのは久々ですね。
えーと、前にお会いした時は8歳くらいでしたか？』

「そうですね。あの時、貴方の周りを飛んでいる蝶々が親には見えていない事に気付いてから来なくなりましたよ。」

『あれ？私が原因なんですか？
それは、それは…。いけない事をしてしまいましたねぇ。』

間延びした、何処かふわふわとしているエーミールさんは、悪びれた様子もなく、くすくすと笑う。
今のこの人に当てはまる言葉は、【柔和(にゅうわ)な男性】では無く、【面妖な男】だろうな。
と、頭の片隅で考える。

『ふふ。嬉しいです。
久々に貴女を見ることができて。
相変わらず、私の神社に来るのを避けて居らっしゃるから、次はいつ会えるのかと思ってました。』

「そうなんですか？エーミールさんも、随分とまあ、気長に私の事を待っていますよね。」

『ええ。私もそう思います。
せっかちな私にしては、随分と長く待っているな、と。
それこそ。首を長くして、ね。』

ゾッとした。
お面で顔が隠れていないからか、
提灯の明かりに照らされている彼の口は弧を描くように歪み、その瞳には光が無い。

あれ？私の記憶違いで無ければ、この人は、エーミールさんは、このような表情を私の前でした事がなかったはずだ。

『ふふ。怯えないで下さいよ。
私の顔がそんなに可笑しかったんですか？』

「いえ…。エーミールさんも、そんな笑い方をするんですね。
まるで…」

言葉を言いかけて口を噤んだ。
彼はこの様な、人間であったら詐欺に騙されそうな顔をしているが、神様なのだ。

「いえ。お狐様らしい笑みを初めて見たと思っただけですよ。
貴方もそんなお顔をなさるんですね。」

遠回しに伝えたかった事を伝えて、出店を回る。

「……。綺麗ないちご飴…。」

『おや。ふふ。いちご飴、まだ好きなんですね。
変わっているようで、Aさんもまだまだ子供ですね。』

『あれ？トントンさんじゃないですか！』

『おん？エミさんやんけ。
童貞の癖に、一丁前に女の子連れて歩いとるんか？
まあ、ええわ。何食べるん？
エミさんって、果物飴好きやっけ？』

『いえ、私ではなく彼女が食べたいと言うので。』

『ふーん。お嬢さんはなんて言うん？』

「私はAです。トントンさん？でしたっけ、お知り合いなんですか？」