さようなら、特別な夏よ＿-syp ページ30
「最期に、出掛けよう？」
私は恋人のショッピにそう告げた。
私には持病があり、もう1週間も生きられないと言われている。
最期に思い出づくりをしたかったのだ。
「...良いっすよ」
快く受け入れてくれるショッピ。
最期のお出掛けは...
「夏祭り、行きたいなぁ...。」
「...わかりました。」
そう言い私に微笑みかけてくれるショッピ。
安心する。
夏祭り、楽しみだなぁ...
私は夏祭りのことで頭がいっぱいだった。
__
そして夏祭り当日。
主治医に無理を言って私は
「何が、食べたいですか？」
「えっと...りんご飴、かな。」
「わかりました。行きましょう。」
そう言い手を引いてくれるショッピ。
出会いは散々だったけど今は何かと優しいんだよなぁ...。
「はい、これで良いっすか？」
「ありがとう...！」
そう言いりんご飴を受け取る。
ぺろっと舐めるも甘い感覚が。
やっぱりこれなんだよね...！
「んじゃ、行きましょうか。」
「はーい。」
私たちは花火がきれいに見える場所へと向かうことにした。
りんご飴を食べ歩きするのって少し楽しいや。
そしてその場所に着いた。
祭りの明かりの面影は一切ない、暗くて静かな場所だ。
ちょうどタイミングよく花火が上がる。
これが、最期の花火、かぁ...。
「...ねぇ、Aさん。」
「ん？何、ショッピ。」
「...此処で俺ら付き合ったの覚えていますか？」
「覚えてるよ...こんな風に花火上がっていた時にショッピが告白してくれたんだよね。」
確か十年くらい前の夏祭り、その時のはず。
ふと横を見ると真剣な表情でショッピが私のことを見つめていて驚く。
「Aさん...俺と、結婚してください。」
「...！？嘘でしょ！？私...死んじゃうんだよ...？」
告げる声が震える。
なんで...こんなタイミングで言うの...？
「...手術、成功する確率あるらしいんです。だから、受けて、成功して、結婚してほしい。これが俺の本心です」
「...はは、そこまで言われたら生きるしかないじゃん。」
「...！という事は...！」
「頑張って手術受けて成功するよ。喜んで。」
ショッピに指輪を嵌めてもらってから抱きつく。
ショッピも抱きつき返してくれた。
最期の夏祭り...ではなく、恋人としての最後の夏祭りだったね。
色々とあった特別な夏。
さようなら、特別な夏よ＿
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作者名：#Chihiro* x他4人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Chihiro0521/
作成日時：2021年7月25日 11時
