それはまるで微炭酸-kn ページ26
「もうすぐ期末テストだ。夏休みが近いからって気を抜くなよ。」
日に日に暑くなっていく気温。肌をじりじりと焼く強い日差し。みんみん煩く鳴く蝉の声。明るく真っ青な美しい空。すぐに温くなる炭酸。至るところで感じる夏に心を弾ませていた頃、無慈悲に現実を突きつけてくる教師に、教室中ががっくりとうなだれ、それだけ言い残して颯爽と教室を出ていく教師を恨めしげに睨む。教師の背中が遠ざかっていくにつれ騒がしくなる教室。私は、テストへの不安を吐露するクラスメイト達を横目に、そそくさと帰る用意をすませ、温くなったジュースのペットボトルを片手に教室を出た。
「あっつい。」
まぶしい日差しを遮るように手を上に翳す。立っているだけでも汗が噴き出してくるような暑さの中、帰路につかなければならないのが憂鬱で仕方がない。手に持っているペットボトルの中身をぐっと飲みほし、校内の自販機に備えられているゴミ箱に放り込んで、そのまま自販機へと目を向
ける。
「冷たいものが飲みたい。」
今月は飲み物にばかりお金をかけているような気がする。大して遊ぶ予定もないため問題ないといえば問題ないのだが、私も年頃の女の子であるため、体重だったり女子力だったりが気になってしまうものである。しかしこんなにも暑いと冷たくて爽快感を味わえる炭酸飲料に目がいってしまうのだ。欲に負けて先ほどとはまた違う炭酸飲料を購入し、のどに流し込んだ。喉を刺激する強炭酸が、暑さを紛らすようにぱちりぱちりと弾けた。
「お、ええもん飲んでるやんけ。」
びくり、と肩を震わす。すべてを吹き飛ばすような爽快で大きな声の持ち主は一人しかいない。
「コネシマ、くん。」
ひらひらと手を振りこちらへ近づいてくるコネシマくん。明るく、人気者の彼。本来なら話しかけられるどころか話すことすらないであろう彼。今年初めて同じクラスになって、偶然彼と隣の席になってで、偶然図書室で出会って、偶然同じ作者の本を手に取った。不思議なことに意気投合し、ある程度仲良くなったと思われる彼は、今のように私に話しかけてくれるようになった。
「ん、炭酸か。ええな、俺も買お。」
悩むそぶりもなく、小銭をいれてすぐにボタンを押す彼。わりと優柔不断に似た一面のある彼を知る身としては少し意外である。ガタンと落ちてきたペットボトルの蓋を慎重にあけ、勢いよく喉に流し込むコネシマくんの姿はまるでCMのワンシーンのようだった。
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作者名：#Chihiro* x他4人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Chihiro0521/
作成日時：2021年7月25日 11時
