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古い映画でも観ているみたいだ。
由羽真さんが亡くなった当時から少しも背が伸びていない、時を止めてしまった姿だということ。
そして、由羽真さんの「優しさ」が全くの演技だということを、知ってしまったこと。全部、そのせい。
「Aちゃんは元気？俺がいなくても、しっかりやってる？」
「……Aは」
いつも僕を見つける度、悠馬君、って呼んでくれた。
どうでもいいことで、楽しそうに笑っていた。
そのはずだった綺麗な口を、ぐしゃりと歪めて笑う。
こんな歪んだ笑い方は、知らない。
まさに、夢を穢された気分。
(勝手に夢を見ていたのは、僕の方なのにね)
「Aは、1人でも平気です。あの子は僕達が思うより、ずっと強い子。今日だって……」
ふぅん、と、鼻歌のような相槌の後に、ぐしゃぐしゃの唇がまっすぐ縫い閉じられて。
ああ、ようやく僕の知ってる由羽真さんの顔、と思ったのも、束の間のこと。
＿＿“なんか、悠馬君の方が平気じゃなさそうだね？“
「＿＿図星、っと」
僕が言い返すよりもずっと早く、そして容易く。
そう、結論付けられる。
隠せないとは、思ってた。
でも、そんな強引に暴かなくたって、いいのに。
(……そういうところはやっぱり、Aとよく似てる)
心のどこかでは、由羽真さんを恨むような、そしてどうしようもなくてただ拗ねるような気持ちが真っ黒な渦を巻いていて、少しでも口を開けばすぐにでも、ごぷり、と溢れてしまいそうだったから。
「あ、そうだ。俺の父さん、元気してる？」
だからといって、ああ、恨み言でも何でもいいから、言ってしまえばよかった＿＿なんて、今更後悔したって遅い。
「母さんについては……まぁいいや。俺、あの女のことは元々あんまり好きじゃなかったし」
そうすれば僕も、“都合のいい幻”の中で、向き合いたくもない真実を突き付けることなんて、なかったのに。
「でも、父さんのことは何だかんだ、嫌いにはなれないんだ。俺の好きな＿＿自由で、争わくてもいいっていうサッカーを教えてくれたのは、誰でもない父さんだったから」
ねぇ、そんな嬉しそうに、その人の話をしないで！
かつてのAをあれだけ苦しめた、悪魔の話を。
「亡くなりました」
由羽真さんと無邪気にじゃれていたボールを、八つ当たりのように蹴り飛ばす。
「無理心中に巻き込まれたAが、命からがら逃げ出したところで＿＿体良く、御堂院に引き取られたんです」
まるで、泥を吐き出すような心地がした。
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2022年3月31日 19時
