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「背は伸びた？やっぱり俺が生きてた頃よりも、大人っぽくなってんのかな。……あー、目がダメになったってのは、やっぱキツいんだな」
ぺらぺらと、滑らかに、饒舌に。
由羽真さんはこんな人だったかなって、違和感。
そういえば、由羽真さんが亡くなってから、もう2年も経とうとしている。
鮮明に思い出そうとしたって、必ずどこかが欠けてしまう。
その欠けた部分が、大事かもしれないのに。
「……あは。俺ばっか喋ってたら、寂しいじゃん。久しぶりに逢えたんだよ、何か言いたいこと、あるんじゃないの？」
視覚だけじゃない、目の機能そのものがもう駄目なのだろう。
全く動かない目元のせいで、感情が読みにくい。
意味ありげになだらかな弧を描く口元と相まって、何だか象牙の彫刻と語らっている心地になる。
何を言ったって、心までは通じない。
そんな諦めが、ふつふつと沸き立つような。
「……僕の知ってる由羽真さんはもっと、優しかった」
「そりゃあ、悠馬君の前では、ずっといいお兄さんでいましたよ。だいぶ無理してたけどな」
それでも彫刻のような彼は、その諦めを更に諦めさせるように、必要以上に口を回す。
「別に、俺は演技派じゃない。探せば、ボロなら死ぬほど見つかる。悠馬君の目の前には、たくさんヒントが転がってたよ」
優しい兄、という仮面の剥がれた由羽真さんは、僕が知っていたつもりでいたかつての“由羽真さん”より、それはもう、ずっと生きやすそうに、ずっと清々しく笑う。
(僕は、苦しむ由羽真さんに、夢を見続けていた？)
「でも君は、真っ直ぐな俺を信じ抜いた。無垢に、それでいて盲目に。＿＿君は、ずっと逃げてたんだ。本当の俺から」
「……違う、僕は…、」
「今の俺が不満なら、早く消しなよ。なんてったってこれは、君にとって都合のいい幻なんだから」
そんな突き放したり、しないで。
でも、優しく受け入れられるのも、怖い。
「……それでもまだ消せないんだから、君は、今の俺に縋ってたいってことだろ。違う？」
由羽真さんの動かなくなった目元から、哀れみの色が見えた気がした。
射抜くような鋭さはなくとも、ぽっかりと空いてしまった心の隙間から、するりと這い入られるような恐ろしさ。
だって、ずっとあなたに会いたかった。
あんな別れ方なんて、あまりにも悲しいから。
「あーあ、そんな悲しい顔しないで。大丈夫、ちゃぁんと付き合いますよ＿＿同じ
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2022年3月31日 19時
