230 レイズ・オン・アイズ ページ37
「……俺と話すんじゃなかったの。何で、ずっとスマホ見てるんだよ」
悠馬にメッセージを入れて、既読のマークがついたのを確認してから、スマートフォン本体の電源を落とす。
その間、一星充くんは不機嫌そうに此方をじとりと見つめていた。
最近は険しい顔ばかり見ていたけれど、今の表情にはどことなくあどけなさが残っている。
「ごめんね。もう用は終わったから、いいよ」
真っ暗になった画面を表向きにして、テーブルを挟んで向かい合わせに座った私達のちょうど中間地点に、そのスマートフォンを置く。
それと同じように、タブレットやデスクトップパソコンの電源も落とした。
機械くらいしかないような部屋で、孤立無援。今まともに使えるのは、自分の言葉だけ。
「もちろん、これからの話を録画や録音するつもりはないよ。これで証明になるかな」
「嘘はないんだろうな」
「うん。話していけば分かると思うけれど、今からの話には私に不利なこともあるから。録っておくメリットがないんだよね」
スマートフォンの周りを回るように、食堂から借りてきた飾り気のないティーポットとティーカップを置く。
「もしかして紅茶、嫌いだった？」
「子供扱いするな。飲める……けど」
(……なるほど、警戒しているのか。無理もないけれど、思ったより嫌われているのかもしれないな)
仕方ない。
一星充くんの前に置いていたティーカップを手に取り、そっと口をつけた。
こくり。喉を落ちる、仄かな甘み。
その様子を伺っていた一星充くんの蒼色の瞳に、いつも通り意地の悪い笑みを浮かべた私が映り込む。
「美味しいよ。自白剤の類なんかも入ってない。君の
あの時はご丁寧にドーピング薬品まで用意してくれて、本当嫌な組織。
しかしその企みには少なからず、彼の私情も含まれているということ。
＿＿それも、ちゃんと受け止めた上で。
カップの縁を軽く拭ってから、もう一度ソーサーの上に戻した。
「あっそ。何話すつもりか知らないけど、カウンセリングの真似事なんかで俺が
ティーカップを手にした一星充くんが、吐き捨てるように呟く。
その言葉を聞いて私は、やっぱり、自分が間違っているという自覚はあるんだ、なんて納得をして。
「そう。でも君が忠誠を誓ったのは＿＿いや、君が忠誠を誓わないといけなかったのは、弟の一星光くんの為だよね」
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
