弐 ページ3
「千秋さん、奏汰さん、おはようございます」
「おう、おはよう！」
「おはようございます〜」
朝から元気に良い挨拶、いい笑顔の守沢千秋さん。ゆるゆるふわふわぷかぷかにこにこの深海奏汰さん。二人共今話題のアイドルだ。
「今日はバライティと雑誌の撮影があります。お疲れかもしれませんが宜しく御願いします」
「おう、任せろ！」
ぐっ、と親指を立ててお得意のウインク。全国の女の子に言うけどお前らなんかより千秋さんの近くに居るからな、あの、守沢千秋さんの。
私だって普通の女子だし二人共顔が整っているからこういうウインクとかにはわわ、としてしまう事もある。
だがしかし、この二人はそれ以上に変わり者なのだ。特に奏汰さん。あの人はすぐに居なくなり近くの水場で水遊びを始める。魚と海が好きで水遊びも好きでも良いと思うが流石にTPOと言うものを弁える冪だと思うのだ。...おっと、愚痴やら何やら漏らしてしまった。
「って、奏汰さんどこ行った！？」
「む、そういえば...居ないな？」
「あの人は...！すみません、奏汰さん探して来ます」
失礼しました！と一礼し楽屋を飛び出した。テレビの撮影というものには金を掛けている分人も多い。その人を掻き分けて青いアホ毛を探す。
このテレビ局の水場はどこ？水飲み場？お手洗い？もしお手洗いなら厄介だ、誰かに助けを求めないとなのだ。
人が疎らになるほどスタジオから離れ流石に違うか...と引き返そうとすると給湯室から腕が伸びてきてそのまま私の首根っこを掴み給湯室に引っ張りこまれる。
「なつ、しずかに」
誰かの腕に入り込んでしまい叫ぼうとしたら手で口を塞がれ完全に私はパニックだ。ジタバタと身動きを取ろうと試みるが男の腕の中では絶望的だ。
「なつ、なつ、ぼくです。かなたです。」
肩を掴まれ体をそちらに向けさせられると緑色の瞳が真っ直ぐとこちらを見詰めてくる。ぴょこぴょこと揺れる青いアホ毛は見慣れていた。
「奏汰さん、じゃないですか」
「はい、ぼくです。びっくりさせちゃってすみません」
「なんでこんなところに...」
「いえ...すこしこまりました」
奏汰さんは1人で深刻そうに口元に手を添える。何があったのだろうか。
「さきほど、『ふしんじんぶつ』をもくげきしました。」
ふしんじんぶつ...『不審人物』！？
「ど、何処でですか！？上の人に連絡しないと...」
「だめです」
「な、なんで...！」
「これはなつ、あなただけにおねがいしたいおしごとです」
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