SEVENTEENの紅一点 3 (ページ29)

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Getting Closer MV撮影の時の話ページ29

SEVENTEEN Getting Closer M/V BEHIND THE SCENE

Mingyu side

くは、と漏れ出たあくびを噛み殺す。やばいやばい、眠くなってきたぞ。

他のメンバーより一足先に撮影入りするために朝も早く起きたから、睡眠時間が足りなかったんだろう。

どうかMVの中の俺はビシッとした顔してますように、と祈っておく。
さっきチェックした時には大丈夫だったけど。

次の撮影まで少しの休憩時間をもらってアメリカーノを飲んでいると、目線の先では次の人の撮影リハが始まった。

カメラの向こうにいるのはAだ。
黒い革張りのソファーの背もたれに腰を下ろして、本来は座る部分に脚を乗せている。また随分と治安の悪い……。

夏の金髪はナリを潜め、彼女の髪はカラスの羽のように黒くなった。清涼感はゼロだ、ゼロ。

そのまま撮影が始まると思ったのに、彼女は椅子から降りてしまった。
キョロキョロと辺りを見る彼女と目が合うと、そのままカツカツとヒールを鳴らしてこっちに来た。俺のことを探していたのかな？いや、そんなことはないか。

今日はなんとなく目線が近いなと思っていたけど、どうやらあのヒールが原因らしい。

「撮影は？」
「一応ヒール当たる部分補強してからにするって」

飲む？とアメリカーノを渡そうとすると、リップ落ちるからと断られてしまった。

「脚、平気なの？」

久しぶりにヒールのある靴を履いてダンスをすることになった彼女は、先月あたりから黙々とその練習を始めていた。

普段はその背の高さからヒールが必要になることは無い。
今までだって授賞式や特別なステージがある時くらいしかその出番は無かったけれど、今回はコンセプトに合わせて履くことを決めたらしい。

細いヒールの支えでダンスをこなす彼女だけど、その靴を脱いで仕舞えば脚は靴ずれだらけで所々皮がめくれているのを知っていた。
痛そう、とそれを見てスングァニが本人以上に顔をしかめていたのを覚えている。

レザーのパンツの裾から見える靴を指させば、今は大丈夫というなんとも頼りにならない答えが返ってきた。

「よくそんな細いので踊れるよな」
「これは個人カットだけ、ダンスシーンになったらもうちょっと太いのになるよ」

これくらいの、と指で丸く形を作って示されてもその違いはよくわからない。どっちにしろ高いヒールのある靴を履いてダンスができるのが不思議だ。