SEVENTEENの紅一点 3 (ページ18)

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ジュンとピアノの話(センイル2020) ページ18

電子ピアノを前にした彼は、普段と少しだけ雰囲気が変わって見える。

椅子に浅く腰掛けて鍵盤を軽く触り、少し確認したオッパはこちらを向いた。スタートしていいよ、と言われたのでスマホのビデオボタンをタップする。

ジュニオッパの指先から生まれるピアノの音は、電子ピアノと言えど人のいない練習室にはよく響く。

一音一音がはっきりしていて、繊細さの中に力強さもあって、わたしのピアノともジフニオッパのピアノともどこかちがう彼の音。

大陸で俳優をやっていたその一環でやりはじめたらしいけれど、今でも時間がある時には触っている姿を見る。
ステージの上で、あるいはSNSでファンに見せることもしばしばだ。

新しい日本シングルが彼の手によってアレンジされて、ひとつひとつの音となって出てるのはなんとも不思議で面白い。
残念ながらドームツアーは中止になってしまったわけだけど、もしも次があるとしたら、舞台の上でこの姿が見れる日が来るかもしれない。

そうこうしているうちに最後の一音まで引きおわり、オッパが鍵盤から指先を離したのを見届けて停止のボタンをタップした。

「これでいい？」
「うん、確認するね」

1人が座るにはちょっと大きい椅子から彼が少しずれたのを見て隣に腰掛ける。スマホの中に映る自身を見る目はとても真剣だ。

チェックを終えたジュニオッパは、スマホをポケットにしまってこちらを向いた。

「Aも弾く？今度は僕が撮るよ」
「2人で同じような映像出したってつまんないじゃん」
「そう？A僕のピアノは違うでしょ」
「たしかにそれはそうなんだけど……むしろ、オッパがやったようには弾けないと思う」

耳ではどの音を弾いているのかはわかるけど、イントロ部分の左手は目一杯開かないと届かない。一応やってみようとするけど、ミスタッチしそうになる。
もしもアレンジするなら、重ねて音を出すよりも何音か連続で弾いた方がわたしにはやりやすそうだ。