本気で抱きつぶされる話【鬼滅の刃】

嘴平伊之助の本気 ページ3

『伊之助さん…私…その』

嘴平「？」

『その！しばらくは…夜、一緒に寝ないようにするわ！』

それは暗にあなたに抱かれたくないと言っていた

嘴平伊之助、人生で一番の絶望を体験する

部屋にひかれた２つの布団が寂しく見えた

夜も深く、光が小さく揺れている

奥さんはその白い寝巻きに身を包みつつも

よくわからない不安な灯火を瞳に移していた

伊之助はその姿を見て

最悪の場合を想定して、思わず腕を掴む

嘴平「な…なんでだ」

思わず弱々しい声になってしまう

この旦那さん、想像以上にお転婆な奥さんに溺れている

実はこの二人、圧倒的な身分の違いがあり

結婚が許されていなかった

奥さんは由緒ある華族の一人娘である

一人で買い物など行ったことはなく

ちなみに言えば地面の土も踏んだことはなかった

そんな奥さんが実は今の生活に耐えられているのか

伊之助は少し、気にしていたのだ

想像以上に焦って、少し怯えたように見えた旦那さんの姿に

奥さんは思わず驚いて

可愛らしい人だななんて思ってしまう

『その……気持ちよくないわけないのよ？』

嘴平「じゃあ、なんでだ」

『は……』

奥さんが顔を真っ赤にさせて下を向いた

長い髪でその美しい気品に溢れた顔が隠れてしまう

少しのぞいていた耳がイチゴのように見えた

『激しいのよ……』

震える唇でそう言われたら

不覚にもときめいてしまうのが旦那さんである

恥ずかしくて小さく震える体

駆け落ちする時でさえ

震えることなく、逆に笑うほどの

お転婆で野心家で、夢見がちな奥さんが

乙女のように震えるのだから

旦那さんは欲望にかられる

『わ、私だって……好きだとか、言われたみたいわ』

本心を言うのって恥ずかしい

そんなことに今更気づいた奥さんは

信じられないほど早い心臓の音に耐えつつ

旦那さんの反応を伺う

その姿がまた、いじらしくて

伊之助は思わず体を引き寄せてしまう

急に大きく感じた体温に

つい先日の夜を思い出して

顔を真っ赤にさせてきぅっと胸をならす

嘴平「そういうことなら」

優しく髪を撫でてやると

彼女は経験したこともないほどのほわほわと

きぅ…となるトキメキに逃げたくなる

やさしい…信じられない、優しい…

奥さんの頭はキャパオーバーを起こしそうである

嘴平「とびきり、優しくしてやる」

『ひぇ…』

これでもかというほどに優しく口付けが落とされた

実は激しくされるよりも

優しくされる方が何倍も辛いことを奥さんは痛感する

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