メリクリ。 ページ45
「Merry X'mas ハル」
マイキーや場地と疎遠になってから、俺は荒れに荒れた。兄妹の呪縛から放たれたのも大きいかもしれない。
勝てるとか勝てないとかどうでも良くて、気に入らない奴はボコったし、ボコられた。
祖母ちゃんを泣かせたくはなくて学校には出席こそしているが、いつもピリピリしている俺に近付いてくる奴はほぼいない。一人の時間は気楽だし、とうに慣れたものだ。
「……マイキーたちんとこ行かなくて良いのかよ」
「夜お邪魔する予定」
言いながらAは紙袋を手渡して来たもので、俺は自然と受け取った。中を見れば、暖かそうなマフラー。
「お前が編んだの?」
「うん。最初は基礎の編み方を練習して解いてばっかりだったから、おばあちゃんに手伝って貰ったけど」
どこか罰が悪そうに目を逸らしながら話すAに、俺はつい笑ってしまった。
「俺何も用意してねー……あっ、待て」
棚から漁り探り出したのは、桜模様のタオルハンカチ。親父が出張に行った際に機内で貰ったらしく、航空会社のロゴが入っている。
「やる」
「えっ、可愛い……!何かハルみたいだね」
「どういう意味だよ」
「ふふ、内緒」
そう言ってAは立ち上がり、マンションを出た。気まぐれなサンタは、良い子になんてしてなくてもやって来るもんだな。
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作者名:カーター千之助 x他1人 | 作成日時:2023年5月6日 4時