ミス・インディペンデント【東リベ】 (ページ42)

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昼食休憩後、盛り上がる高学年生の大縄跳びを尻目に「そろそろ呼ばれるぞ」とワカに声を掛ける。

　ン、と頷き立ち上がったワカはオーバーサイズのTシャツを捲り、見事なまでに割れた腹筋を覗かせた。

　アナウンスが響くなり、ゆらりと体を傾け「カメラよろしくー」と保護者の待機場に向かうワカをジイちゃんとベンケーと見送る。

「お！Aも出て来たな！！」

　ベンケーの言う通り、友人だろう女子と話しながら合流地点まで歩むAは、ワカと足を結う為にカチューシャのように巻いていた鉢巻を外しながらグラウンドを歩む。

　そして両手を広げるワカを見付けるなり、その胸に飛び込んだ。

「真！見ろ、このショット良いだろ！！」

「……それ喜ぶの本人たちだけじゃねーの」

　万次郎は間違いなく拗ねる。今も何故か某大御所俳優のように襟元で鉢巻をネジネジし、無駄に絵になるワカとAを睨み付けているのだから。

　スタートラインまでAを誘導したワカは、Aから受け取った鉢巻を互いの足首に括り付けた。Aは無邪気に喜んでいるが、狙った獲物は逃さないうちの白豹を舐めて貰っては困る。ほら、Aの細い腰に回した手付きがもう既に厭らしい。

「なぁ、何か俺イライラして来たんだけど」

「奇遇だな、真。俺もだ！！どこの王子と姫だよ！？」

「日本中の不良を容赦なく殴り付けてた特攻隊長が王子は有り得ねー」

「ワカの野郎、ジムの女会員にもあんな距離許してねーぞ！？」

「お前たち煩いわ！！！」

　ジイちゃんの一喝を合図のように、Aとワカは走り出す。えっ、息ぴったりじゃん。

　あの二人の脚力なら転んだりしない限り首位は堅いと思ってはいたが、恐らく父親であろうオッサンが息子(仮)を宙ぶらりんに持ち上げて走っている現時点二位のペアとの差がえげつない。

「互いの運動神経と相性の良さだな。Aは平均より背が高い上に長い脚の運び方を心得ておる。若は背こそ低いが身軽で柔軟、Aとタイミングを合わせればーー」

　ジイちゃんが解説している間に、Aとワカは悠々とゴールテープを切った。

　歓喜に抱き合う二人。ワカはすぐ足首の鉢巻を解いてはAに手渡し、Aはチームメイトの応援に回った。ワカもそれに倣い、背後からAを覆いながら白組ペアのレーンの前で構えている。

　結果、もう一組の白組ペアは三着だったがAとワカの活躍が功を成し、白組の勝利に終わった。