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クーラーボックスから大して給水にならなそうなコーラを選び手にした弟と、Aにスポーツドリンクを渡された妹は互いにどこかむす、としている。
律儀なAはジイちゃんと俺、ワカとベンケーにそれぞれ礼を述べ、自分用だろう冷えた水を取り出した。
「Aとエマ、髪結い直したげよっか？」
「良い。A姉やってー」
声を掛けたワカに冷たく返してはAにヘアゴムを渡すエマ。
「お前良い加減にしろって。何で俺が気遣わなきゃなんねーの？」
「そっちこそデリカシーないんじゃない？A姉に髪やって貰うからもう喋んないで」
やはり兄妹喧嘩か。Aの性格上、余計な口出しはしまいと思いながらも心配しているのは表情から読み取れる。
「万次郎待ってね。エマ、私また高いポニーにするけど同じで良い？」
「うん！」
エマの髪を慣れた手付きで結い整えたA。エマも満足したように鉢巻を首に掛け直せば、またスポーツドリンクに口を付けた。
「おいA、エマ甘やかすなよ」
「万次郎、Aに当たるな。エマもだ。お前らに何があったかわかんねー俺らじゃどうにも出来ねーし、Aだって困るだろ。休憩中に話してスッキリしとけ！」
「……自分のクラスの奴らかチームの奴らか知んねーけど、"皆にA姉紹介したいー"とか俺に言って来たから見せモンじゃねーって断ったのに、結局開会前にA呼び出すし、」
「マイキーだって皆の前でA姉にベタベタしたりわざと振り回してんの、ウチ恥ずかしいから嫌だって何回言っても"結果出してんだから良いだろ"とか屁理屈と嫌味ばっかだし、」
「リレー負けたの自分のせいだってメソメソすっから、中盤の走者なんか転んでも痛手ないようテキトーに選ばれてっから結果変わんねーって励ましてやったのに不貞腐れるし、」
「うちのクラスの子たちがマイキーとA姉凄いって褒めたらA姉は普通にお礼言ったり皆と話してくれたのに、マイキーは"俺らがお前らより凄いのは当然"とか言うし、」
「事実じゃん」
弁だけは立つのに中身がくだらな過ぎる上に終わりの見えないやり取りに溜息を吐きたくなるのを必死に堪えていたら、隣からぷっと噴き出す音が聞こえた。……お前か、ワカ。
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作者名：カーター千之助 x他1人 | 作成日時：2023年5月6日 4時
